遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
「刺さる」という意味。全てが「刺さる」→「くすがる」となる訳ではない。
例えば「蚊に刺された」を「蚊にくすがれた」とかいう表現は無いということ。
「くすがる」(刺さる)・「くすがった」(刺さった)は有るが。
「くすがれる」(刺される)・「くすがす」(刺す)というのは無い。
「棘が刺さった」(とげんくすがった)・「針んくすがった」(針が刺さった)とかいう使い方である。必ずしも鋭利なものでなくとも激しくぶつかって変形した様に対しても使う場合がある。
「自転車金網にくすがってた」(自転車が金網に衝突してた)
この場合金網もしくは自転車が変形してしまったくらいの勢いで自転車がぶつかっていた事を指す。ちなみにこういう使い方の場合「刺さる」というのも良く使われるので使用頻度は「くすがる」・「刺さる」半々くらいか。しいて違いを探すとなると「刺さる」が鋭角的で「くすがる」が鈍角的か。そういう意味では「くすがる」=「めりこむ」という解釈も成り立つところではある。
「くすがる」という言い方はこの程度であろうが、これを「くすげる」という言い方にすると若干広がるところであろうか。「くすがる」は受動で「くすげる」は能動という違い。
ただし「蚊が刺した」を「蚊がくすげた」とは言わないので対象幅が広がるという訳ではなさそうだ。
「刺した」を「くすげた」・「刺して」を「くすげて」・「刺しといて」を「くすげといて」などと言うのは有りそうな気はする。まあ「くすげといて」なんて聞いた事はまずないが。
おそらくは好ましくない・よろしくない事を指していると思われるので~しておいてとかいう使い方は普通しないんだろうなと。
どちらにしてもネット等で調べたら辞書に記載はなく甲州弁で「くすがる」→「かがむ」という意味使いの地域もあるそうな。(もちろん遠州弁にこういう意味使いはない。)
遠州と同じ意味合いでは飛騨・三河・駿河辺りでも使っているらしいという事から東海地域での表現(方言)のようである。
「くすがる」・「くすげる」に近い感じがしてくる言葉に「くすぐる」があるが。
流石にこれとの関係性は皆無であろう。
例文
「きんのう夜中んがんこおっきな音しただよ。」
(昨日夜中に凄い大きな物音がしたんだ。)
「目え覚めたあ。」
(それで目が覚めたのかい。)
「いやあ起きてただん。なんしょ暗いもんで見いいったってわかりゃせんらあ。だもんで今朝見いいっただよ。」
(いや、起きてたんだけどね。でも外くらいから見に行ってもどうせ様子が分からないだろ?だから今朝になってから見に行ったんだ。)
「なにあったでえ。」
(何があったの?)
「それがさあ。ガードレールんとこに車くすがってただよ。」
(それがね、ガードレールに車が激しくぶつかってたよ。)
「誰んのを。」
(誰の車が?)
「知らんだあ。」
(分からないんだ、あんな車見た事なくて。)
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