遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
「つみくる」と「ちみくる」は抓る(つねる)。
「例文
「いやだやあ。蚊にさされちってえ。痒くて堪らん。」
「ほんなもん掻いたりちみくっちゃ駄目だにい。かえってずうっと痒みん収まらんくなるでえ。」
「ムヒかなんかない?」
「それがないだよ。だで爪で十字切っとけ。」
「ちみくるのとどう違うよお。」
「知らん。知らんけどそうせる奴いるにい。効くかどうか試しいやってみい。」
例文音声はこちら
「つみきる」だと摘み取るというニュアンスでうちの集落辺りでは使い分けられている。この場合の「きる」は「切る」。もちろん全うな積みきる(積み尽くす)とか摘みきる(摘み尽す)とかいう共通語とは別の話し。
全部辞書には載ってないので方言であろうが、「つみくる」と「ちみくる」は遠州弁であろう。「つみきる」は広い範囲で使われている方言で場所によっては(遠州でも)「つみきる」もつねるという意味で使われている地域もあるらしい。
「ちみくる」は指でつねるのではなく爪でつねる事をさす事が多い。なので当然痛い。その点「つみくる」は指ででも爪ででもどちらにでも使うのでそう痛そうという感じはしない。
連れまわすという意味。強引な印象を与える表現。
例文
母「あれえこの子寝えっちゃってるじゃん。」
(何?この子眠っちゃってるじゃないの。)
妹「あんにいが自分行きたいとこつれくれまわすもんで弟疲れかあって寝えっちゃっただよ。」
(お兄ちゃんが自分の行きたいとこに連れまわしたもんだから弟が疲れ果てて寝ちゃったの。)
母「お兄ちゃんあんたねえ。自分勝手なこんするじゃないにい。」
長兄「こいつ(妹)だって同罪だでねえ。わしばっかのせいじゃないでねえ。それにおぶうにどんもかっただでねえ。」
(妹だって同罪だよ。自分だけのせいじゃないんだから。それにおぶるのに凄く重かったんだから。)
母「だでなによう。下の面倒ちゃんと見んもんでじゃん。偉くもなんともないでねえ。」
(それが何?下の面倒きちんと見ないからでしょうに。そんなの偉くなんかないわよ。)
例文音声はこちら
潰した壊したという意味。
詳しい話しは「つんぶれる」(つぶれる)でしてあるので略。
例文の訳もついでに略。
例文
「家寄ってくけえ。まあ上がってきない。」
「まあた どうせ どんぎたなく してるだらあ。」
「失礼しちゃうやあ。けっこかないけど足の踏み場くらいはあるにい。」
「なあんか踏んづけてつんぶしたら一生ゆわれそうだで遠慮しとくわあ。」
「おお そうけえ ほいじゃ またなっ。」
「またのっ。」
訳すにはたと困る言葉である。
直で訳すと「というので」ということになるだろうが
共通語で近いのは江戸前の「てんで」辺りになるのだろうか。
「そうかってんで慌てて駆けつけたんでえ」
これが遠州弁だと
「そうかっつんでちゃっと飛んできたでえ」
みたいなものか。だとするとその訳は「~というので」ということになるのか。
でも「~というので」だと「つうんで」という言い方になり「~というのだ」だと「つうだあ」となることが多く、適切な訳という気がしない。
「てな感じで」・「てなもんで」の方がニュアンスとしては近いのかな。
例文
「うきゃうきゃぴっぴ ほげほげ~♪」
「このくそ忙しいだに何ご陽気に鼻歌なんか歌ってるよを。」
「嗤っちゃうっつんで。」
(嗤っちゃうよってなもんだ。)
「なにがよを。ついに気いふれただか?」
(どうしたんだ?ついに気でもふれたのか?)
「人減らいても仕事のやりようは変わらんだもんで結局二人分を一人がやってるのと一緒じゃん。で給料変わらんだらあ?でミスはするなだらあ?それ考えたら馬鹿らしくてやってれんくなった。」
「今頃悟ったあ。はあとうの昔に皆知ってるにい。」
(今頃気づいたのかよ。もうとっくに皆判ってることだぜ。)
「じゃなんでみんな普通に仕事してれるよを。」
「休憩室で皆読んでる雑誌見たら?皆転職調べてるじゃん。」
「あ、なるほどね。」
例文音声はこちら
連れ。
連れ合い(配偶者)や子供連れのつれ。辞書などでは、仲間として一緒に行動する人などをさす。と記載されているので、特に遠州弁と言う訳ではないのだが、若干ニュアンスというか使い方がずれる。
「うちのつれがさあ」となれば(私の友達がね)ということ。
「うちんつれのつれが」となれば(私の連れ合いの友達だという知り合いが)となる。
配偶者・家族をさす場合ももちろんあり紛らわしさを防ぐために大抵「うちのが・うちのやつが」(家のが・家の奴が)といって済ますのと「うちんつれ」と「の」を「ん」と撥音便化して言うので「うちのつれ」といった場合は友人知人を指すことが多い。
「うちんつれんとこのつれが」は(私の友達の友達という知り合いが)
「うちんとこのつれのつれが」は(家の者の友達の友達と言う知り合いが)
「うちののつれのつれが」は(女房または旦那の友達の友達という知り合いが)
「うちのの」は基本配偶者に使う。家族には「うちんとこの」が一般的。ただし集落によって異なる場合もある。
遠州では方言的には「友人」という言葉よりも「つれ」・「知り合い」などが多く使われる。当然親密度は「つれ」の方が「知り合い」よりも高い。
例文 二人(A・B)で歩いているところにある人(C)が声を掛けてきた。
C「やあ!」
A「よお」
C「じゃ」
A「お~」
B「誰?知り合い?」
A「釣りのつれ。下手だもんでいつもつれんだけどね。」
という会話も存在しうる。
例文音声はこちら