遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
状況としてはムッとした時になる口の形状を表して言う言葉。
形状を説明することが難しく上手く説明できない。
言葉を分解してみると、「はす」は「斜」つまり「ななめ」。「斜に構える」という風に使われる「はす」であろうか。「蓮」では意味分かんないし。多分「斜」であろうかと自分としては想像するところであるが。
どこぞの説明で「はそ」(鳥ならくちばし人なら唇を指す)という言葉があるというのを拝見したことがあるが、国語辞典にも古語辞典にもネットでの辞書においてもそういう事が記載されていないのでその「はそ」が「はす」に変化したという解釈は十分考えられるが正直なところ同調するまでの説得力に欠ける気がする。
いまひとつは「はそ」=「くち」とされているのもあったが、こちらもどの辞書にも記載はないし遠州弁だとしても「はそ」単独で使われる事は無いので例えば「口をはさむ」とかを「はそんはさむ」とか言っているのならばなるほどと思えるがそうではないのでこれも「はそ」=「くちばし」と同様説得力に欠ける気がする。
「とんがらす」は「先が尖ってる」とかで使われる「尖がる」(とんがる)+「させる」であろうて。
したがって「口を斜めに尖らせる」状態ということになる。「への字に曲げて突き出す」みたいなものであろうか。?いやなんか違うような気がするけど。
つまり光景としては口が突き出ていないと尖がったとは言えないし、感情としては憮然としていなければならない。ふくれっつらで頬(ほお)がぷうっと膨らんでなおかつ口はキッと結んでいるのではなくすぼめて突き出てる様というべきであろうか。でも必ずしもぷーっと膨らんでなくとも「はすとんがらす」使うもんなあ。よくわからない。
ちなみに「はすとんがり」・「はすとんがれ」・「はすとんがらん」とかいった変化はなく「はすとんがらして」・「はすとんがらせす」・「はすとんがらさす」とかいった変化になるのが違和感のないところである。
例文
「なによーあいつえらいぶすくれとるけどなにしたよを。」
(なんだよあいつ、えらくご機嫌斜めみたいだけど何があった?)
「自分のゆうこときいてくれんもんで、ちんぷりかあって口んはすとんがらせてけつかる。」
(自分の希望通りにならないもんだから、ぶすっとしてふくれっつらしていやがる。)
「甘やかしてるもんでえ。ちったあきつくゆうときゃゆわんとかんらあ。」
(普段甘やかしてるからだよ。少しはきつく言うべき時にはきちんと言わないと駄目だよ。)
「きつくゆって泣きゃ泣いたでばあばんとこいってまた甘やかされるだで。塩梅が難しいやあ。」
(泣くまできつく言うとおばあちゃんのとこ行ってよしよしって甘やかされるから加減が難しいよお。)
「ええだよなんしょゆやあ。頭使わんでも。」
(とにかく言えばいいんだよ。考えこまなくても。)
例文音声はこちら
その2
以前「はすとんがらす」(すねる・ふくれっ面などの不快を表わす表情)の記事を書いた際、「はす」ってなんぞやのまま分からず仕舞いであった。
そういえばと思いだし「はす」を使った言葉って他にないのかなと巡らし(妄想し)たら
「はすっぱ」(蓮っ葉)という言葉が浮かんできた。
その意味は、言動が浮薄なこと。女性の態度や言動に品がない事。また、その様。そのような女性をも言う。とネットの辞書にはあった。
繋がりが何もないから「蓮とんがらす」という事ではなさそうだ。
話し変わって、鳥のくちばしを「はそ」と言い鳥のくちばしのようにとがらせる様「はそとがらす」から変化して「はすとんがらす」となったという説があるということだが、これについては「嘴」という漢字が「くちばし・はし」と読むというのを見つけたところで「はしとがらす」が変化して「はすとんがらす」となったという繋がりが浮かんできた。
合ってるのかどうかは知らないが話しの筋はこれで通った事になる。
まあくちばしは最初っから尖っているものであって状況によって尖らせたり変化するものじゃなかろうというつっこみはあり「はしみたくとがらす」ということであるなら分からなくもないところではあるがそうではないところに無理が出そう。それにくちばしのような口の表情からすねるとかいうイメージは湧かないのがネックでに思える。「はし」を「はそ」もしくは「はす」と言うというのも無理がなくもない。
突飛な考えではあるが「はしぼそがらす」・「はしぶとがらす」を漢字で書くと「嘴細鴉」・「嘴太鴉」と書くそうな。これのどっちかが変化して「はし」+「とん」+「がらす」=「はすとんがらす」となったという妄想も生まれなくもないな。「嘴太」だったら「はし」+「ぶとん」+「がらす」となってありえそう。もっともカラスがいつもすねて見えるとかいう事はないので説得力は皆無のただの語呂遊びの領域だけど。
他には「端」ではしをとがらせるということで、口先を尖らせるというのではなくて口の端を尖らせる事を「はしとんがらす」で「はすとんがらす」になったとも勘繰られる。表情的にはムッとした感じとなってすねるというイメージには近いところである。しかしながらこれについても「はし」が「はす」に変わったのかの説明が想像がつかないのでなんだかなあではあろう。
などと色々妄想しとりますがやはりなんと申しましょうか、「はすにかまえる」(斜に構える)という「斜」が不快を表わす際に口が斜めになってすぼめる様から「斜とんがらす」じゃないのかと以前の記事で述べたのだが、意味的な「すねる・ふくれっ面になる」という事を考えるとこちらの方がいまも合ってるような気がするところである。
ところで、似たような言い回しで「ちんぷりかある」というものがあり、これとはどう違うのかとかを考えると。
「ちんぷりかある」は態度として横を向く・視線を合わさない・口を利かないといったものが思い浮かぶ。表情としては怒ってるという大雑把な類いでありこういう表情をすれば「ちぷりかあってる」ことになるという特徴的なものは思い浮かんでこない。
「はすとんがらす」はどうなのかというと、はて?となる。どういう態度を指すのかどういう表情を指すのか曖昧模糊としていて具体的なものを説明できない。こりゃ言葉の元を探るよりまずこっちのほうを先に説明できるようにしないといけないな。
諸々結論が出ないがとりあえずその2。