遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
「実際のところは」・「本当のところは」という意味合いの言い回し。共通語だとこれに近いのは「ホントはね」か。方言というよりここいら近辺の口癖という方が正しいか。
男女共用の表現であるが、同じような表現で男言葉だと「ほんたあ」・「ほんたあの」などというのもある。
文章の最後につけて種明かし風なニュアンスにすることが多い。もちろん頭に持ってくることもあるがな~んだと相手に思わせるには最後につけたほうが効果的な場合が多い。頭に持ってくると言いにくい事を言おうとしてる「実は・・」みたいな感じになることもある。
さりげなくとかなにげに伝えたい場合には最後につけるほうが効果的であろう。
例文
「さあ乗らまい。」
「なんか吐きそうになったらいやだやあ。」
「そんときゃゆうっくり上向いて深呼吸すりゃいいだって。」
「へ~もの知ってるじゃん。大したもんじゃんか。」
(へ~よく知ってるねえ。見直したよ。)
「入り口で係りの人にそう言われたでえほんとゆうと。」
「行くんでしょ」・「行くんだろ」と言っている。
「カッコいいよお」とか言ってる訳ではない。
穿った解釈で説明をすれば「行かむと欲すだらふ」が縮こまって「いかすだら」になったと。もちろん嘘ですけどまあこんな感じの解釈しても遠くないような気がしてくるくらい遠州弁は古い日本語という感じがする。
行くに限らずやるでもなんでも大抵はこういう言い方をすることが多い。
「いくらあ」だと「行くでしょ」と決め付け具合が強くなる。
例文
「今日これからあっちゃんちいかすだら?」
(今日これからあっちゃんの家に行くんでしょ?)
「いくよを。なんでえ?」
(行くけどなんか用?)
「あっちゃんのおかあさんにゆっといて欲しいこんあるだよ。」
(あっちゃんのお母さんに伝えて欲しいことがあるんだけど。)
「え~そんなん自分でゆってやあ。」
(え~そんなの自分で言ってよ。)
「わし今から行かにゃかんとこあるだで。ついでだでいいじゃん。」
(今から行かなくちゃいけないとこがあるの。行くんならついでに言ってよ。)
「紙かなんかに書いといてやあ。忘れちゃかんでえ。」
(忘れないように紙とかに書いて。)
「いいよそんなめんどっちいこん。ゆってくれりゃあ済むこんだで。」
(いいよそんな面倒くさいことしなくても。言ってくれれば済むことなんだから。)
「なにゆうよを。」
(なに言えばいいの?)
「来週の会合の資料の確認。各部署の意見書の取りまとめとを、公民館の場所取れたかの確認とを出席人数の把握とを。後ぉそれからあ・・・・。」
「・・・やっぱ紙ん書いて。覚わさらんわ。」
(やっぱり無理。紙に書いて。)
例文音声はこちら
まあ「嘘に決まってるじゃない」という事でぐでぐでな方言という訳でもないのだが。それでもニュアンスがそこはかとなく方言っぽいかなと思って記載。
当然自分の行動言動に対して「嘘だよ~」という自己申告又は種明かしといった使い方もあるがそれとは別な使い方のお話し。
「そんなのはったりだよ」とか「信じちゃだめだよ」という感じで「騙されるんじゃないよ」と暗に言っていることが多い。もちろん自分の正当性を主張するために他を否定するという使い方もする。
基本はなんかされた言われたと動揺している人に対して惑わされるんじゃないよという励ましの表現。「そんなことないよ」・「大丈夫だよ」とかいうより強い否定で安心させる仕方である。
「うそにきまってるら」だと「嘘でしょそれは」といったニュアンスで確証が薄くなる。
「うそにきまってるに」だと「嘘に違いないよ」といったアドバイス的な要素が強くなる。
例文
「さっきい声掛けられちゃったよを。」
「誰にい。」
「知らん人にい。」
「なんてえ。」
「お小遣い上げるから遊びましょって。」
「いくらあ。」
「○○万。」
「そんなのうそにきまってるじゃん。あんたそれでほいほいついってったら馬鹿だにい。」
「知ってるよを。だもんで今ここに居るじゃん。」
ちなみに「そんなのうそにきまってるら。」だと次に続くのは「あんたそれでほいほいついてったら馬鹿見るにい」(馬鹿見るよ)
「そんなのうそにきまってるにい。」だと「ほいほいついてったら痛い目みるらあ」(ひどい目にあうんじゃないの?)みたいな続きになるであろう。
例文音声はこちら
「怒りが収まらない」と言っている。「怒れて仕方ない」。怒りが尾を引いている感じである。対象物に直接ぶつける場合もあるが、多くはやり場のない怒りを人に聞こえるような独り言として発することが多い表現であろう。
強調形は
「怒れて怒れてホントしょんない」
他の言い方では
「馬鹿怒れる」・「ど怒れてくる」
などがありこちらは瞬間的な印象になるが「怒れてしょんない」には継続性というか尾を引く感じがつきまとう。
怒れて+しょうがない。この場合のしょうがないは湧き上がってくるというニュアンスと考えるのが妥当か。
似たような表現で「あたまくる」というのがありその強調形として「馬鹿頭くる」・「ど頭くる」などがあるが、こちらとの違いはまた。
例文
「あんの野郎ホント怒れてしょんない。こんなとこいれんわ。」
「どうしたでえ。なにしたでえ。誰がでえ。いつでえ。ほんでえ帰るだけえ?」
「おめえもごちゃごちゃうっさい。気分悪いだでぶっさぐるにい。」
「気分悪いなら医務室行くけえ。それとも病院けえ。」
「そういう話しじゃねえわあ。もうあっちいけ。」
「あっちってどっちでえ。」
「くっそ~てめえ武道やってにゃあ本気でぶっさぐってるだにい。勝てんのがむかつくう。」
「いいたいこんあるなら直にゆった方いいにい。」
「言えりゃあ苦労いらんわあ。」
例文音声はこちら
「ゆうのいいじゃん」。「ゆう事いいじゃん」という言い方もよく使われる。
多分遠州弁を知らない人がこれの正しいニュアンスを示せといわれたら苦労するであろう言い回し。直訳したら先ず以って日本語として繋がらない。
「そうゆうのいいじゃん」(そういうのいいじゃない。)とかとは全く異なる意味使いなのである。
「おばあさゆうのいいじゃん『わし知らん』だってさ。」
(おばあさんの言い分が呆れちゃうよね「私は知らん」だって。)
おばあちゃんのいう事に嗤っちゃうよね・呆れちゃうよね・随分な事言ってくれるよね・とんでもないこと言ったよね・何様だよね
とかいった状況に応じて細かく意味が変わる言い回しである。大雑把にいえば「よく言うよ」みたいな感じと「ねえ聞いて聞いてひどいんだから」的または「ふざけんじゃないよまったくもう」的なニュアンスの表現。パターンとしては「ゆうのいいじゃん」の後にどう言ったのかを復唱するというのが多い。基本女性言葉であり男はあまり使わない。
言い方としては厭そうに言うというのが基本。なにしろ悪口・陰口を言うのであるからして。
この言い方の基本は「ゆう事」(言う)であるが「やる事」とか「する事」などでも使われることがありえなくもない。が、殆ど聞かない。
尚、ごくごく稀であるが「殊勝な事いうじゃないか」・「泣かせることいってくれる」とかいう意味合いで使われる事もある。滅多にないが。視線的には上から目線なので大抵は大人が子供に対して使う場合が多い。こちらでの使い方は男女共用。
「あの子小さいだにゆう事いいじゃん『何かてんだう事ありゃゆって。』だって。」
(あの子小さいのにこれが殊勝な事言うんだ「何か手伝う事あるなら言って」だってさ。)
例文
「なんかさあ町内会のゴミ当番周ってくるの早い感じしん?」
(何気に思うんだけど町内会のゴミ当番周ってくるの早い気がしない?)
「結構なんだかんだゆってやらんずるい衆いるでねえ。真面目にやってたら馬鹿見ちゃう。」
(結構なんだかんだ言ってやらないっていうずるい人達居るからねえ。真面目にやってると損しちゃう。)
「そうゆやあ向かいんとこの家もなんもしんねえ。」
(そういえば向かいの家もなにもしないよねえ。)
「あそこのおばあさゆうのいいじゃん『うちゴミ出さんだで当番やらんでもいいだあ。』だってだにい。そんで当番やりゃせんだもんで。」
(あそこのおばあさんの言い分が呆れちゃうよね「うちはゴミは出さないから当番やる必要ない」とか言うんだよ。そういって当番やらないんだからねえ。)
「ええ歳こいてなにゆってるだいねえ。」
(いい歳した大人が言うことじゃないでしょうにねえ。)