遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
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イントネーションの違いによってニュアンスを使い分けるという遠州弁の表現では高度な部類に入るものである。ま、実際耳で聞けば明らかに違うのでそんな大層なものではないが。
意味としてはどちらも「知らないね」とか言っているのだがその裏に含む意味合いが異なる。男女共用。
*「しらん」の「し」と「よを」を強く言う場合の「しらんよを」。
言い方(発音)として共通語で近いのは「しらんわ」であろうか。とにかく「知らない」と言い張っている(言い切ってる)ということになる。なんで私が知っていなくちゃいけないのという憤慨が籠もる事が多々ある。身に覚えがないという意味でも使われるので「俺じゃない」という訳になることもある。
近い言い回しでは「しらんにい」というのがあるがこちらの方がきつめ(突き放し)な言い回しになる。
*「よを」のみを強く言う場合の「しらんよを」。
言い方(発音)として共通語で近いのは「しらんなあ」であろうか。「しらないからね」というニュアンスで、私に振るなよとかいった迷惑な空気感が醸し出される事がある。聞いてどうするといったくだらん(愚問)という意味でも使われるので「あほくさい」という訳にした方が判り易い場合もある。
近い言い回しでは「あんたねえ」というのがあるがこちらの方が呆れ具合が増した言い回しになる。
例文(ふたつの「しらんよを」さあどっちだ)
「誰よ。ここんさあワックスかけてかわかいてただにその上踏んづけてったのわあ。跡んついちゃってるじゃん。あんたけえ。」
「しらんよを。今帰ってきたばっかだに。」
「ほんじゃなによを泥棒でも入っただかいやあ。貧乏人狙って何愉しいだかいねえ。」
「しらんよを。なんか盗られたもんとかあるだ?」
「見た感じないみたいだけど。じゃあ誰の仕業だかいねえ。」
「どうせ自分ボケこいただら。ドア近くからかけ始めて部屋出る時拭いた上歩いて出たの気づかなんだとか。」
「ああそうかあ。」
「おい勘弁してよをホントにけえ。」
最初の「しらんよを」は「俺じゃねえわ」
二つ目の「しらんよを」は「知るかよ」と訳すのが自然。
例文音声はこちら
「連絡してよこす」を例にすると「連絡してくる」という意味になる。まあ分解して「よこす」が「くる」という意味だといってしまえばそれきりではあるが「やってくる」を「やってよこす」とはいわないので「してよこす」でひとつの言葉としたほうがこんがらなくて済む。
共通語でいうと「便りをよこす」という表現があるので「~してよこす」というのが遠州弁かといえばそうではないのだが、「電話してよこす」ではなく「電話をよこす」若しくは「電話してくる」が共通語であろうからこういう言い回しは遠州独特かもしれない。(名古屋あたりでも言うかもしれないが)
例文
「あいつう。着いたら電話してよこすっつった癖にしてこやがらん。」
(もう、着いたら電話するって言ってた癖にかけてこないよ。)
「迷っただなんかしてまだ着いちゃいんじゃない?」
(迷ったのかなんかでまだ着いてないんじゃないの?)
「それならそれで電話してよこすらあ普通。」
(それならそれで普通電話してくるだろう。)
「あいつ普通じゃありもしんに。」
(あいつ普通じゃないだろう。)
「ま、そりゃそう(方向音痴)だけどさあ。だで心配してるじゃん。」
(そりゃあそうだけど。だからこそ心配してるんじゃないか。)
「付き添いいるだらあ。心配しんでも大丈夫だにきっとお。」
(付き添いの人も一緒なんだから心配しなくてもきっと大丈夫だよ。)
「あいつが心配じゃあらすけえ。持ってかせた荷物が心配なのっ。なんしょ痛むに早いだで。」
(あいつが心配じゃなくて持って行かせた荷物の方を心配してるんだって。とにかく痛みやすいものだから。)
例文音声はこちら
「雨上がったけど道んじゅるくなってるだよ。」
(雨が上がったけれど道がぬかるんでいるよ。)
じゅるいとは、ぬかるむと言う意味である。が、共通語と違って
「まだ煮えちゃいんもんで、うで卵じゅるいだよ。」(まだ煮えていないから、ゆで卵が固まってない。)のように、地面以外にも本来硬い(もしくは適度の)筈のものが柔らかい状態を指す時にも使う場合もある。
セメントがまだ固まっていない状態を「セメントんまだじゅるい」。
配合として水を入れ過ぎという場合「水入れ過ぎでじゅるくなってる」。
セメントに限らず調理とかでも使う。
ほんで、「うー、どじゅるい。」(意外と凄くぬかるんでる。)つうなあ「うー、弩ずるい。」(うーん、物凄くずるい。)と聞き間違えると話が合わんくなるだで気いつけんといかんだにい。
つまり「じゅるい」に「凄く」を付ける場合「馬鹿じゅるい」・「えらいじゅるい」・「がんこじゅるい」という言い方は有るが「どじゅるい」だけは「どずるい」(ど狡い)と聞き間違えることになりかねないので「どじゅるい」という言い方は基本しないという事である。
逆に、本来柔らかい筈の物が硬くなっているようなときは、「こわい」を使う。
「ごはんがこわい」という風にである。けっしておっかない訳ではない。
無しついでで言うと「ずるい」が「じゅるい」になった訳ではない。
例文
「雨んだあだあで道ん馬鹿じゅるくててさあ。足元びちょびちょ。」
(雨が強くて道が大分ぬかるんでてさあ。足元がひどい濡れよう。)
「おめえなんかいいほうじゃん。わしなんか道と田んぼの違い分からんくて肥溜めん足突っ込んでどん臭いだにい。必死こいて洗っただにまだ匂い取れやせん。」
(そんなのまだいい方だよ。オレなんか道と田んぼの区別できなくて肥溜めに足落としちゃって匂いが堪らないんだ。懸命に洗ったんだけどまだ匂いが消えてないよ。)
「・・・近寄らんといて。」
「やあ引くなやあ。冷たいじゃん。」
例文音声はこちら
*「失礼しちゃうやあ」
馬鹿にしないでよ・みくびらないでよ・冗談じゃないわよといった意味合いである。
例文1
「奥さんでけるの」
(奥さん、出来るの?)
「失礼しちゃうやあ。あんたねーこんぐらいでけんでどうせるよを。」
(馬鹿にしないでよ。あなたねえこの位の事出来ないでどうするのよ。)
「およげるだか?」
(泳げるの?)
「失礼しちゃうやあ。こうみえても昔水泳部だっただにぃ。」
(見くびらないでよ。こう見えても昔水泳部だったんだから。)
例文2
「これ買えるだか?」
(これ買えれるの?)
「失礼しちゃうやあ。そんくらい持ってるって。」
(馬鹿にしないでよ。その位のお金は持ってるわよ。)
「そんな派手なん似合わんら。」
(そんな派手なの似合わないでしょう。)
「失礼しちゃうわぁ。そんな歳いっちゃいんにぃ。」
(冗談じゃないわよ。そんな歳いってないんだから。)
*「いやだやあ」
失礼しちゃうやあが攻撃的というか反論的なのに対し、こちらは受身的な否定というニュアンスになる。女言葉の場合恥じらいが追加されるが野郎言葉には恥じらいのニュアンスはない。言葉の最初に使われる。後ろや文中になると単純に「厭だなあ」という意味になることが多く。意味合いとしては全く異なる。
例
「最近やせた?」
「いやだやあ。かわりゃあせんよを。」
(冗談いわないでよ。変わってないって。)
「そんな派手なん似合わんら。」
「いやだやあ。まだええら。」
(いやねえ、まだ大丈夫でしょ。)
「今日あんた当番だら。」
(あなた今日当番でしょ。)
「そうなの。ホントいやだやあ。」・「いやだやあ、忘れかあってた。」
(そうなの本当に厭なんだ。)・(あらま恥ずかしい、忘れてた。)
例文音声はこちら
どちらも女性がよく使う表現で男性でも使わなくはないが。男性だと「失礼しちゃうやあ」は「なにこいてるだあ」という言い方をする方が普通であろうか。
「いやだやあ」については「馬鹿こいちゃかん」辺りとなろうか。
遠州弁の得意技である擬音めいた言葉。
共通語に直そうにもニュアンスが近い言葉が見つからない。びしゃびしゃが近いがそれとは違う。
テレビでとある遠州人がこの「しゃびしゃび」を使ったら「ああしゃばしゃばね」と言われてるのを見た事があるんで共通語だと「しゃばしゃば」ということになるのであろうか。
使用例として一番色んなとこで使われてる文章だと
「カレーがしゃびしゃび。」
スープカレーなるものをもし知らずにいたらこう言うであろう。カレーのように本来ドロっとしたものが水気が多すぎて液状になってしまった状態を指す。
「てんめえ!セメントに水どんだけ混ぜただぁ。こんなしゃびしゃびじゃあ固まりもしんに。なにやっとっただあ。」
(おまえ!セメント混ぜるのに水入れすぎ。これだと固まらんだろう。注意散漫にもホドがあるぞ。)
セメントの知識はないので水の入れ過ぎが固まらない原因になるかは責任持てませんが一例として。
びしゃびしゃだと「水で(カレーが)びしゃびしゃ。」
しゃびしゃびは「カレーが(水っぽくて)しゃびしゃび。」
だからと言って、服がしゃびしゃびとか体がしゃびしゃびとは言わないんだなこれが。服も体も本来ドロッとしたものじゃない(心は別)から使わないのだが、結構奥が深いだよ遠州弁って。しかし心の奥底でしゃびしゃびは遠州弁ではないと、共通語なんじゃないかと思ってもいる。
逆に粉っぽいみたいな水分が少ない場合には「ぱさぱさ」と言うのだがこれは共通語か。
例文
「コロッケ食うときさあ。ソースかけるらあ。」
「まあ醤油っつう奴もいるみたいだけど、わしゃソースだの。」
「そのソースってしゃびしゃびの方けえドロドロん方けえ。」
「しゃびしゃびだの。」
「うちと一緒でえ。」
「それんなによを。」
「いや別に聞いただけ。」
例文音声はこちら