遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
「BAABAA」。床屋さんだとかおばあちゃんだとか言ってる訳ではない。対象物を強弱で表わした場合に強い状態であることを指す時の言葉。とはいっても風とかの自然に対してに限定して使うのが普通であろうが。したがって風の場合だと「強くピューピュー」とでも訳せばいいのだろうか。程度としては煽られる位か。
主な使い方を考えると素直に「風が強く吹いている様」と説明してもいいのだろうけど人によっては風に限らず使用することもあるので少しぼかした。例えば水道管が破裂とかして「水がばあばあに吹き上がってる」とかみたいな。
ところでだが、「ばあばあ」という言い方が遠州弁独特かは定かではないがとにかく遠州では使ってる。誰か他所で使って通じるかどうか試して貰いたいものだ。男女共用の表現。
似たような意味使いで「だあだあ」と「だかだか」などがあるが、「だあだあ」は「際限なく」とか「きりがない」といった「処置なし」といった印象の際に使われる。それと対象物は「ばあばあ」と違って大概なものに使われる。
「だかだか」は「どかどか」と訳せ量の多さを表す場合に使われる。「どんどん」・「次々に」・「矢継ぎ早に」などという意味合いで使われることもある。「今日はだかだか人がやってくる」とか。
「風が強く吹いてる」という場合
「風んばあばあ」と言うのが普通で、強く吹いているという意図では「風んだあだあ」とはほとんど言わない。
これは「ばあばあ」が強弱を表わす表現に対し「だあだあ」は質や量とかを表わす表現であるからであろうか。
同じように「風んだかだか」の場合でも訳せば「「風がどんどん」であり「風んだかだか入ってくる」とかで使うがこれも「だあだあ」と同様に「強く吹いてる」という意味合いではない。
では次にこれを「風」でなく「雪」とした場合
「雪んばあばあ」と言えば風の吹きすさぶ中で舞う雪を指す。共通語にしたら「横殴りの雪」とかであろうか。つまりこの場合「ばあばあ」は雪に掛かっているのではなく雪景色における風の勢いに掛かっているということである。
「雪んだあだあ」となれば雪が降り続くとか大雪が降っている(積もっている)状態を指す。共通語にしたら「降り止まぬ雪」とかであろうか。
「雪んだかだか」だと降る雪の量が半端ないとか絶え間なく雪が舞っているとかを指す。共通語だったら「どか雪」とかであろうか。
「風でスカートばあばあめくれて」だとその訳は「風が強いせいでスカートが大層派手にめくれ上がりまくって」とかになる。(もちろん捲れる様を言っているので「ひらひら」とか「ふわふわ」とかいう形の訳にした方が適切なのであるがそんな生易しい状態じゃない様を指すので共通語ではそれに適した表現が見つからない。強いてあげればブワッブワッととかガバッガバッと?)
「ばあ」ではなく「ばあばあ」と言うことでより強調するという効能の他に継続性や連続性とかも表現できることになる。
例文
「やあ往生こいたわあ。」
(ああえらい目に遭った。)
「なによをどうしたでえ。」
(え?どうかしたの?)
「さっきあそこんさあでひっころんでやあ。大金入れたトランクひっころんだ時に開いちゃって札束ばあばあ舞ってまっつぁおさあれ。」
(さっきあそこで転んでしまってね。転んだ拍子に大金入っていたトランクが開いてしまって、中の札束がそこかしこに舞い散らばってしまって真っ青になっちゃったよ。)
「なによを、ゆってくれりゃあ拾いいっただに。最近小遣い少ないでやあ。」
(なんだよ言ってくれれば拾いに行ったのにい。最近小遣い少ないからな。)
「馬鹿野郎じゃん。」
(悪い冗談だぞ。)
「で、どうしたよを。」
「そりゃあ必死こいて拾い廻ったさあ。」
「全部拾えただか?」
「なんとかな。でもそん時の周りの衆らの動きなんかそりゃどばやかったにい。」
(なんとかね。でもその時の周りの連中の素早さといったらなかったよ。)
「そりゃあのっ。当然だらあここぞという時だでやあ。」
(それは一攫千金のチャンスだもの当然でしょう。)
「特にシゲさなんかあんなはしはしいごけるなら普段からせよっちゅうくらいいごいてたやあ。がめった金取り戻すにゃあ往生こいたけど。」
(特にシゲさんなんかあんなに俊敏に動けれるのなら普段からそれくらい動けよって言いたくなるくらい機敏だったよ。ポケットに入れようとしてた金回収するのに随分世話焼けたけど。)
「ほれみいわしだけじゃありもしん。」
(ほらあ俺だけじゃないだろ。)
「外でこけてたら洒落んならんかったなこりゃ。」
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