遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
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「大分痛んだ」とか「使い古した」とかいう意味で使われている。
辞書とかでは
「やれ」(破れ)①やぶれ(ること)。やぶれた・所。②刷りそこなったりしてだめになった印刷物。
とある。
遠州弁ではあからさまな「やぶれ」の状況とかを指すわけではなく「使い込んだ」というニュアンスが多く含まれる。といったところが共通語との違いであろうか。
例文
「どうよこのぽんぽんいいらあ?だで高く買ってやあ。」
(どうですかいいでしょうこのオートバイ。なので高く買ってよ。)
「つったって見た目がんこやれてるじゃん。」
(そんなこと言っても見た感じ相当使い込んでるじゃないですか。)
「通勤で毎日乗ってただもんでみばあよかないかもしれんがエンジンは快調だにい。」
(毎日通勤で乗っていたから見た目は良くないかもしれないけどエンジンは快調なんだよ。)
「中古で売るにゃあ厳しいみばあしてるで、部品取りでしか値を付けれんやあ。」
(中古車として売るには厳しい見た目なんで、部品取りとしてしか値を付けられないなあ。)
「そうゆわすとを。なんとか頼むやあ。」
(そんなこと言わないでさあ。何とか頼むよ。)
例文音声はこちら
以前記事にした「やれやれ」という意味使いの「やいやい」とは別物。
「やいのやいの」と同じ意味だと思われる。まあ広い地域で使われている言い回しであろうが遠州では「やいのやいの」よりも「やいやい」を使うほうが多いという事で記載。男女共用。
「やいやいいわれてやいやいだの」(やいのやいの言われてやれやれだよ)
という言葉遊びも成り立つ。
「やいやい」に近い言葉では「ひゃあひゃあ」があるが「やいやい」は忠告・指示といった勢いであることに対して「ひゃあひゃあ」は文句・叱咤という感情的な勢いが籠もるという違いであろうか。もちろん受け取る方がどう聞こえるかという事であるので同じことを言っても「ひゃあひゃあ」と取られるか「やいやい」と取られるかは定かではない。
他には「ぎゃーつく」・「ぐつぐつ」・「ぶちぶち」・「うだうだ」・「ぐだぐだ」・「ぐでぐで」などがある。違いを説明してくと長くなるので紹介だけで。
例文
A「ほ~いちょっと駄目じゃん。」
B「そうじゃなくて先にあれしな。」
C「あれえ これもしんとかんじゃん。」
D「うっさいなあ。そんな周りからやいやい言われちゃ集中できんじゃんかあ。」
A「おんめえとろくさくて見てれんもんでじゃん。」
D「いらんこんじゃん。」
C「馬鹿こいちゃかんてそれんうまくできんと後の衆皆困るだでねえ。」
例文音声はこちら
「やあやあ遠からん者は音にも聞け云々」
遠州弁の「やあ」は多分この「やあやあ」の末裔もしくは一族であろう。これを遠州弁に直すと
「やあなあ、遠くにいる衆は声え聞けえ。近くにおる衆はよく見よやあ。」とかになる。
流石に「やあやあ」は言わない。関東では「やいこのとうへんぼく」・「やいやい耳の穴かっぽじって云々」といった「やい」となっているのであろうか。関東は「やい」で遠州は「やあ」という形で変化してきたと勘繰ることが出来よう。ちなみに遠州弁で「やいやい」は「やれやれ・あ~あ」とかいう嘆息という意味になる。共通語としては決めつけはできないが「おい」というのが近いものとなろうか。(おい・こらは薩摩から明治になって関東に持ち込まれたという事らしいが)
普段遣いにおいて「やあ」の使い方は
「やあばかっつらちゃんと聞け。」(おいばか野郎ちゃんと聞け。)
江戸風味だと「やいやいちゃんと聞きやがれ」で
昔っぽいなら「やあやあしかと刮目せよ」とかになるんだろうかな。(刮目は見るだけど)
辞書等には「やあ」は以下の説明がなされている。
感動詞、呼びかけを表わす。驚いたとき、また、思いついたときに用いる。文の最初に用いられる。
以前にも述べたが「やあ」には他に
「や」=「よ」・「やあ」=「よう」と変換することになる「やあ」。間投助詞、呼びかけの意を表す。文末につく。
というのもあって
「やあばかっつらちゃんと聞けやあ。」(おいばか野郎ちゃんと聞けよう。)
と最初と最後に「やあ」がつくという同じ言葉の連呼と聞こえるが呼びかけということでは連呼であるが感動詞と間投助詞という別物ということになるようである。
この二つ以外に「やあ」という言葉はあるかといえば「嫌」を「やあ」と発したりも稀にする。
なので
「やあばかやあやあ」(もうホント嫌だよう)
という「やあ」羅列の言葉遊びも考えられるところである。残念なことに実際においてはこういう場合「嫌」は「やあ」ではなく「いや」なので
「やあばかいややあ」と言うのが普通であるが。
話し飛んで、北海道の方言においても「やあ、しばれるねえ」とかのように「やあ」がよく使われるようであるが、その勢いはなんか違う感じがする。
「やあ、しばれるねえ」だと訳は「まあ今日はしばれますねえ」とかであろうか。
これを遠州弁で「やあばかさぶいにい」などすると「もうホント寒くて嫌になる」といった感情の発露な感じであり日常の何気ない挨拶とかには遠州弁の「やあ」は適さない。
従って使いどころによっては北海道の人が北海道弁?の勢いのつもりで遠州で「やあ」と発すると「なんだこいつ堪え性の無い奴だなあ」と思われかねないことになる。
遠州弁の「やあ」を訳すと状況によって違うが「なんだよ」・「おい」・「こら」とかいう事になろうか。脱線するが遠州弁の「おい」は「ねえ」・「ちょっと」とかいうニュアンスで共通語の「おい」とは異なるニュアンスである。
話し戻してこの場合での北海道弁?ニュアンスに近い遠州弁は「まあ」か「おい」ということになろうか。他には「ホント」・「けっこう」とかもあてはまりそう。「しばれる」は遠州では使われないが
「やあ、しばれるねえ」とかいうあいさつということであれば
「おいあんたしばれるねえ」。「まあほんとしばれるやあ」とかいう風になろうか。
「やだやあ」。
女性言葉であって男が発する言葉ではないのだが遠州弁の「やあ」のニュアンスを説明するのに適した表現と思えるのでこれを挙げてみる。
尚、此処で上げているのは間投助詞の「やあ」についてで感動詞の「やあ」についてではない。
「やだやあ」を訳さば「いやだよう」。ニュアンスで訳せば「参っちゃうなあ」・「困るなあ」辺りであろうか拒否・拒絶とかのニュアンスはほとんどない。
江戸風味の時代劇によくでてきそうな「ちょいとやだよう、お前さん」。そのニュアンスはほぼ同じであろう。これを遠州弁にすると「おぉい、やだやあ、あんた」とかになる。
脱線するが「やだよう」は駿河のちび○子ちゃんがよく発する言葉でもあるが、遠州における「やだよう」というのは「やなこった」というニュアンスのもので拒否のニュアンスが多くを占めることになる別物となる。ただし○子ちゃん風味の意図として「やだよう」と発せられてもニュアンスは汲み取れる(聞き取れる)もので他所の人の「やだよう」発言を誤解するということにはならない。
話しを戻して、このように「やあ」=「おい」というものではなく
「やあ」=「よう」という勢いが遠州弁に「やあ」なのである。
「やあ」ということで一見凄く拒絶してる風にとられがちだろうが拒否の要素は極めて薄い。拒否ということなら
「やだにい」(嫌だからね)「いやだでねえ」(嫌だからね)などとした方が拒絶度合いは強いのである。
文章の頭に来る感動詞の「やあ」についてはこの限りではなく、「やあ」=「おい」という勢いが多くありしかも「やあ」より「やい」の方がきつい言い方である。
例文
「ただいまぁ。」
「あれなによを。えらい早いじゃん。今日残業じゃなかっただ?」
(え~!どうしたの早いじゃないの。今日残業だって言ってなかった?)
「うん、ドタキャンで仕事無くなったもんで普通に帰れた。」
(それが仕事が直前取りやめになったものだから定時で帰れたんだ。)
「やだやあ。晩御飯いらんと思って作ってんよを。そうならそうで電話くらいしてやあ。」
(も~参ったなあ。夕食いらないと思って作ってないよ。そうならそうで電話してくれたらいいじゃないの。)
「んな、近いだもんでそれっぱかのこんでしんでもいいじゃんか。ふんで自分らわあ。飯どうするでえ。」
(そんなもの。近いんだからこれしきの事で電話しなくてもいいだろうに。ところで自分たちはどうするつもりだったんだ夕食は。)
「外食べ行く気だったもんで。」
(外食するつもりでいたの。)
「なにおを。」
(何を食べにいくつもりだったんだ?)
「回転寿司かさわやか。」
(回転すしかハンバーグセット。)
「やあなんでえ随分じゃん。おれんいん時ばっか。」
(なんだよそれ、俺が居ない時には豪勢なのかよ。)
例文音声はこちら
文章の頭に持ってくる時の「やあ」を訳せと言われてもはたと困るのであるが、大雑把に言えば注意をこちらに向ける為の掛け声みたいなもの及び「嗚呼」といった感情の表現と言った感じの二種類か。使い方の一例として
「やあ おんしゃ なにしてるだあこんなとこで えらい久し振りじゃんかあ。なによを。」
(おおこんなとこで遭うなんて随分とお久し振り。今はなにしてるの?)
聞きなれない人が聞くと「なんちゅう言い草だ」ということになるが、遠州弁においては頻繁に使われる久し振りに会った人同士の再会の挨拶表現である。
基本男言葉で女性の場合は「ほい」・「あんた」が主に使われる。他に男女共用の言い方としては「あれえ」というのがあり「あ」にアクセントポイントがある。
こうした「やあ」の言い方は別に遠州の発明とかではなく、「あいや 暫しお待ちを」とか「や これはご無礼つかまつった」とか「や こいつぁてえへんだ」みたいな江戸時代の頃からの表現の名残りでなおかつ形が変形して「やあ」となって今に至っているのではないかと想像してる。
古語辞典に載っている「や」の意味は「呼びかけに用いる」・「驚いたとき、思いついたときに用いる」とあり。ほぼ遠州弁に「やあ」と同じ使い方ではなかろうか。
遠州は明治期に薩摩言葉から広まったといわれてる「おい・こら」といった表現に染まらなかったということか。まあ勝手な想像だけど。
「やっ」だと緊迫感があるし「や」だと異議を唱える風に聞こえるのであるが、それに較べれば「やあ」となれば多少はゆるい感じになるので使い勝手がいいのであろう。
他の地域はどうか知らないが遠州で「おい」だとほぼ注意・説経が後に続くと解釈されるので「やあ」の方が柔らかい印象を受ける。
発音と意味は感情によって微妙に異なるという幅広いバージョンを有する。
「やあ 勘弁しとくりょを」
(おーい勘弁してくれよ)
「やあ どんくさいなやあ」
(もう 動きが鈍いなあ)
「やあ 聞いてるだか?」
(おい ちゃんと聞いてるのか?)
「やあ どうしっかなあ」
(う~んどうしようかな)
「やあ何々」と言って「やあ何々」と返すと「やあやあ我こそは」みたいな言い合いの合戦が始まることが多いので注意が必要な場合もある。
「やあ」と投げ掛けられて不同意の場合は「ええ?」と返し同意する場合には「おう」と返すことが多い。どっちでもない場合には「う~ん」・「ふ~ん」とかが多いと思われる。
「やあ どんくさいなやあ」だと「ええ?そうけえ。」(ええ?そうかなあ)・「おう そうだあれ」(うんそうだよ)・「うーんどいだいやあ」(うーんどうだろ)
例文1
「やあ聞いてるだか。」
(おい人の話し聞いてるのか。)
「やあ横からごちゃごちゃうっさい。」
(も~、横からごちゃごちゃうるさいよ。)
「やあ、人ん親切でゆってやってるだになにその言い草わあ。」
(なんだと?人が親切で言ってるのになんだよその態度は。)
「分かったで頼むで静かにしとくりょを。」
(もう分かったからお願いだから静かにして。)
例文2 揚げ足とりの場合
「やあどうしっかな」
(う~んどうしようかな。)
「やあじゃねえよそんなもんこうすりゃ済むこんじゃん」
(う~んじゃないよそんなものこうすりゃいいだろうが。)
「いちいち独り言に揚げ足とらんだっていいじゃん。」
「これみよがしにゆうもんでえ。」
(これみよがしに言うからだよ。)
例文音声はこちら