遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
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「そんな温めなくてもいいよ」を遠州弁に直すと
「あんたさあそんなぬくとめんでいいにい」(注、にい にアクセント)
この場合の「にい」の言い方でニュアンスが微妙に異なる。「いいにい」を例にすると
1・「いい」よりも「に」と「い」を両方強く言う場合は強制力が強くなる。つまり断定か命令形に近くなる。
2・「いい」を強く言って「にい」を尻すぼみ的に言う場合は助言した感が増す。こうした方がいいよという感じ。
これに「だ」を足して「だにい」にした方が判り易いか。
1の場合「いいだにい」は「いいんだから」と置き換え
2の「いいだにい」は「いいのに」と置き換えられる
このように書き文字だけだとどちらか判断がつかないことが多い。
いつか音声付で説明するよう進化したいものだ。
判り易いかどうかはあれだが、沖縄かどこかの言い方でお兄ちゃんの事を「にいにい」というそうな。正しいイントネーションは知らないので映画「涙そうそう」で発せられていた言い回しで話しを進めると、始めの「にい」をAとして次に続く「にい」をBとすると、先に説明した「1のにい」はA、「2のにい」はBのイントネーションとほぼ同じである。
例文
「夫婦喧嘩はガチンコでやった方がいいだにい。」
(夫婦喧嘩はガチンコでやった方がいいんだよ。){1のにい}
(夫婦喧嘩はガチンコでやった方がいいのに。) {2のにい}
「他人事だと思ってえ。ぼこぼこにされたらどうしてくれるよを。」
(他人事だと思って随分な。徹底的に打ちのめされたらどうしてくれるんだ?)
「ぼんろぼろんなったら うち きない。ほとぼり醒めるまで泊めたるにい。」
(ぼろぼろになったら家に来な。落ち着くまで泊めてやるよ。){1のにい}
(ぼろぼろになったら家に来なよ。落ち着くまで泊めてあげてもいいんだから。){2のにい}
例文音声はこちら
「にい」は長音化のものと「に」+「い」のものとのふたつが共存している言い回しであるような気がする。というのは勘違いだという事に最近気が付いた。
例えば
長音化だと「言やあ買うだにー」(言えば買うのに)「に」を強調する言い方。
「に」+「い」だと「絶対買うだにい」(絶対買うんだよ)「い」は軽い命令。
こうした違いならはっきりと分かるところであるが
「行くにー」(行くよぉ)と「行くにい」(行くからね)
となるとそのニュアンスの違いは実際耳にしないと分からない。もちろん文章としてならば
「ほらあ、くるってんで あっちゃん帰れんくなるで行くにー。」
(ほらあ、遊びに夢中になってないであっちゃん 帰れなくなっちゃうから行くよぉ。)
「ほい、そんな帰りたくないならはあ知らんでねえ。先行くにい。」
(もう、そんなに帰りたくないならもう面倒見切れないから先に行っちゃうからね。)
例文音声はこちら
で、違いは判断できるが実際はこんな長々と言う事は無く単に「いくにい」だけで済ますという事が多いのでさてどっち?というのが判りづらいところである。
なんぞと思っていたんだけどどうも違うらしい。
そもそもの「に」とはなんぞやという話しであるが、説明するにおいて国語辞典にも載ってはいるが古語辞典の方が納得がいくのでこちらを載せると
「に」{接続助詞}①逆接の確定条件を表わす。・・・のに。・・・けれども。
これに「い」{終助詞}①呼びかけの意を表す。・・・よ。②命令の意を確かにする。③強めの働きをする。
この「に」と「い」が合わさって「にい」となる。
ってことでなんのこたない、「い」には命令的要素②と強調する要素③の両方を兼ね備えているということになる。しかも呼びかけの要素もあるという。
したがってあえて「にい」の他に「にー」などという存在をこじつけで捻り出さなくとも「にい」だけでなんにでも辻褄が合うのであった。
初級では「にい」=「よう」と説明しているが
中級では「にい」=「よう」の他に「にい」=「から」・「ので」という使い方がある。
例えば「美味しいにい」
「騙されたと思って食べてみい、美味しいにい。」
この場合の「にい」は「から」・「ので」ということになる。
イントネーションはほぼ抑揚をつけない平坦。(気持ち「に」は強く「い」を流す感じにはなるが)
訳は「騙されたと思って食べてみなよ。美味しいんだから。」
次に、イントネーションを「に」を強めに「い」は流さずはっきりと発すると
「あそこのケーキ美味しいにい。だでいっぺん行ってみい。」
この場合の「にい」は「よう」ということになる。
訳さば「あそこのケーキは美味しいよう。だから一度行ってみなよ。」
例文音声はこちら
文字にすると違いは分かりづらいが、イントネーションで聞き分けるものである。
「から」・「ので」の意の「にい」に近いのは「もんで」・「でえ」とかがあり置き換えは可能であることが多い。
ちなみに「だに」の初級「だよ」・中級「のに」とは違って「にい」の中級「から」・「ので」は初級の「よう」と意味が異なる度合いは少なく「よう」と解釈してもそれほど破綻しないので楽ではあろう。
共通語のニュアンスだと「きったねえの」(汚いの)とかいった風であろうか。「納得いかない」・「理不尽だ」という意味で使われることも有る。
まあ「随分じゃないか」みたいなものである。
例文
「遅かったじゃん。はあ先に整理券貰っちゃったにい。」
「わしん分も貰ってくれただ?」
「余分になんかくれすかあ。自分のだけだよを。」
「ほいじゃわしも今から貰ってくるで待ってて。」
「それがのっ。はあちっと前に定員打ち止めだって。」
「うそ!随分じゃん。なんで?開始からまだそう経ってないじゃん。どばや過ぎやへん?」
「それがの人ががんこ並んで近所からクレーム出たみたいでそんで予定よりかずっか早くに整理券配り始めただあれ。」
「なに?それ。馬鹿ずるっこいじゃんかあ。」
「まあ、早起きは三文の得。っつうこんだいね。」
「う~、なんか怒れるう。」
「文句言いたいならあそこんさあの衆らさっきいからあだけまくってるで多分あんたあと同じだで行ってまざってきない。」
「いやわしそこまで野生化しちゃいん。」
例文音声はこちら
この言い回しの味噌はやはり「っこい」。
「けっこい」(綺麗)・「ひゃっこい」(冷たい)とかと同じ「っこい」である。
微妙なニュアンスで「ひゃっこい」を例にとるとぬるくはなく冷た過ぎる訳でもないその中間的な冷たさを表す。
従って、「ずるっこい」も誠実ではないがずるいとまでは言い切れない感じになる。なので「あざとい」という訳にするのが近いのかな。
「ずるっけえ」という言い方もあるがこちらの方が狡い(こすい)感じが強くなる気がする。訳すと「汚ねえ!」という言い切りっぽいのであろうか。
よりはしょって「ずっけえ」という言い方もあるが、ここまでくると親しい間柄でしか使えないものとなる。
イントネーションの違いによってニュアンスを使い分けるという遠州弁の表現では高度な部類に入るものである。ま、実際耳で聞けば明らかに違うのでそんな大層なものではないが。
意味としてはどちらも「知らないね」とか言っているのだがその裏に含む意味合いが異なる。男女共用。
*「しらん」の「し」と「よを」を強く言う場合の「しらんよを」。
言い方(発音)として共通語で近いのは「しらんわ」であろうか。とにかく「知らない」と言い張っている(言い切ってる)ということになる。なんで私が知っていなくちゃいけないのという憤慨が籠もる事が多々ある。身に覚えがないという意味でも使われるので「俺じゃない」という訳になることもある。
近い言い回しでは「しらんにい」というのがあるがこちらの方がきつめ(突き放し)な言い回しになる。
*「よを」のみを強く言う場合の「しらんよを」。
言い方(発音)として共通語で近いのは「しらんなあ」であろうか。「しらないからね」というニュアンスで、私に振るなよとかいった迷惑な空気感が醸し出される事がある。聞いてどうするといったくだらん(愚問)という意味でも使われるので「あほくさい」という訳にした方が判り易い場合もある。
近い言い回しでは「あんたねえ」というのがあるがこちらの方が呆れ具合が増した言い回しになる。
例文(ふたつの「しらんよを」さあどっちだ)
「誰よ。ここんさあワックスかけてかわかいてただにその上踏んづけてったのわあ。跡んついちゃってるじゃん。あんたけえ。」
「しらんよを。今帰ってきたばっかだに。」
「ほんじゃなによを泥棒でも入っただかいやあ。貧乏人狙って何愉しいだかいねえ。」
「しらんよを。なんか盗られたもんとかあるだ?」
「見た感じないみたいだけど。じゃあ誰の仕業だかいねえ。」
「どうせ自分ボケこいただら。ドア近くからかけ始めて部屋出る時拭いた上歩いて出たの気づかなんだとか。」
「ああそうかあ。」
「おい勘弁してよをホントにけえ。」
最初の「しらんよを」は「俺じゃねえわ」
二つ目の「しらんよを」は「知るかよ」と訳すのが自然。
例文音声はこちら