遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
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「そうづらか」(そうだろうか)。
「づら」は最早死語の遠州弁のようなもので使い手は希少である。その後継(代り)に「だら」・「だに」が使われるようになっている。
「そうづら」は「そうだら」・「そうだに」という風に変化してきている。
しかしながら
「そうだらか」・「そうだにか」という言い方は理屈上では考えられるが実際には存在しない。(だらかは使ってる地域があるかもしれないがうちんとこでは使わない)
このように「づら」表現の何もかもが「だら」・「だに」に移り変わったという訳ではない。
「づらか」の他にも「づらで」・「づらよ」とかいった言い回しなどは「だら」・「だに」に置き換える事は出来ない。
ちなみに「づらか」は「だか」・「け」。「づらで」は「だで」・「もんで」。「づらよ」は「だよ」とかであろうか。
昔の遠州弁を真似るにはとにかく「づら」を駆使すればらしく聞こえたものであるが、今はそんな単純なものではなくなっているのである。
「づら」の使い手は明治生まれくらいまでであろうか。昭和生まれはおおよそ「だら」・「だに」の使い手である。昭和ひとけたの世代は両親が「づら」でありながら本人は「だら」・「だに」の使い手という変遷期の世代になるのであろうか。
一体何があったというんだろう。
「持ち行くだに」
これだけだと「持ちに行くのに」と「持ちに行きなさいよ」と二通りの受け取り方ができる。
「あんた持ち行くだに」
となれば「あなたが取りに行くんだよ」という事だと分かる。
「ゆやあ持ち行くだに」
これだと「言えば取りに行くのに」以外に解釈はない。
じゃあ「ゆわれりゃ持ち行くだに」とした場合はどっちか?
答えは「言われたら取りに行くんだよ」と「指示されれば取りに行くのに」の両方である。「あんたゆわれりゃ持ち行くだに」であれば「指示されたら取りに行くんだよ」であり「あれえゆわれりゃ持ち行くだに」であれば「なんだよ言われれば取りに行くのに」という方になる。
ついでに、これが「ゆってくれりゃあ持ち行くだに」だと
「ひと声掛けてくれれば取りに行くのに」となる。
まあ、これらは「だに」の説明というより「言う」の使い方によって「だに」が「だよ」と「のに」という訳にに分かれるという脱線話しであるが。
つまりなにを言いたいのかというと、話しの中においては「持ち行くだに」だけという言い方であってもイントネーションの違いと共に前後の言葉から略されたものを読み取れるので「持ち行くだに」だけでも流れで判断できるのであるが、発音が分からないうえにこれだけでしかも文字にするとどっちなんだ?とまごつく限りである。
書き文字として意図をきちんと伝える為には普段の言い回しでは略される部分をも書いておく必要があるようだ。
そういえば、「そうダニ」とか「そうズラ」みたく
方言の部分をカナ表記する書き方というのがあったっけ。
書き分けできればそりゃ確かにどれが方言どこが共通語というのが一目瞭然という事になるのだろうけど。じゃあ
「おいあんたなにやってるよを」
を、そういった書き分け調で記載しても
「オイアンタナニヤッテルヨヲ」
ってな感じでまるさら(全て)カナ表記になってしまう。
細かく言うと
「おい」。共通語では男言葉であるが遠州弁は女性が多用する傾向にある。
「あんた」。「あなた」という意味使いというよりも単なる呼びかけの表現である事が多い。従って訳す際には「ちょっと」などとする事になる。
「なにやってる」。イントネーションの違いによってニュアンスが異なる。
「よを」。訳すと「のだ」・「のさ」。
ということで全体を訳すと「なにやってる」を共通語と同じイントネーションとした場合
「ねえちょっと何してんのさ」
という事になる。
遠州弁は自覚の無い方言といわれるのは、こういった一見「よを」だけが方言に思えても実際は全て方言というところにあるのであろう。
そういう事なんで、ここでは書き分け調の記載はしとりません。つうか出来んわな。
注、「なにやってる」
「なに」には「なに」(A)と「なに」(B)、「やってる」には「やってる」(C)と「やってる」(D)という言い方があって、あくまで一例だが例えば
A+Cだと「おいお前なにやってんだ」とかいう制止の意味での使い方となる。
A+Dでは「おいおいなにやってんだ」といった正せといった類いの意味での使い方となる。
B+Cでは「一体なにやってんだ」と問うている意味での使い方となる。
B+Dだと「あのなあなにやってんだ」という呆れてる勢いでの使い方となる。
共通語だと「春だというのに」
遠州弁では「春だというに」・「春だっつうに」
共通語だと「買いに行くのに便利」
遠州弁では「買い行くに楽」・「買いい行くに楽」
といった風に「の」を抜いた言い方をするのが遠州弁である。以前にも書いた「ら」抜きが遠州弁の特徴であるように、「の」抜きも特徴のひとつであろうか。もっとも「行くが男のど根性」とか「するが堪忍」とかいう全国的なフレーズもあるくらいだし、「親を早くに亡くし」みたいな使い方もあるから遠州弁だと言い切れる訳ではないがその傾向が顕著というところが特徴であることは確かであろう。
では「の」を抜かずに言った場合どういう風に遠州人には聞こえるかというと
大袈裟ではあるが「のに」というのはどことなく言い訳っぽく聞こえる。「言えばやったのに」みたいな。
「やるに便利」と「やるのに便利」とでは言い切り具合が違うという印象を持つものである。
印象ではなく意味的にはどうかということで共通語の「のに」は辞書をひくとふたつあった
A「のに」{接続助詞}やむを得ず・(意外にも)後件に述べる事柄が事実であることを表わす。(終助詞的にも用いられる。「よせばいいのに」・「金もないのに贅沢をする」
B「のに」①(ことの)ために「旅行するのに必要な物」②(の)ものに「君のにしよう」
とあった。どちらに対しても「の」抜きするのであるが、印象の元はAに因るものであろうか。
では「の」とはなんぞやということになると
「の」{格助詞}③上の語を体言として扱う事をあらわす。「来るのが遅い」・「安いのがいい」。
⑤まで説明があったがここでの「の」は上記の説明のものであろうと思われる。例文を遠州弁では「来るに遅い」・「安いがいい」といった風になる。
「の」抜きは「のに」に限ったことではなく「のが」・「ので」などでも起きる。完全に省略される場合もあれば撥音便化となる場合もある。
「そうせるのんいっちゃんいいって」(そうするのが一番いいって)
「先行くで出る時玄関かっといてよ」(先に行くので出る時には玄関の戸締りしといてよ))
他にも「の」を「だ」に変えるという言い方も存在する。
「先行くだで出る時玄関かっといてよ」
ただし解釈としては「だで」=「「から」という事にもなるので別種であるともいえなくはないところではあるが。
例文
「あれえ珍しいじゃん先いるじゃん」
(おやこれは珍しい事に先に来てるじゃないの。)
「遅いじゃん。あんた何やってたよを。」
「いっつもあんた来るに遅いもんで早めに時間ゆっといただよ。たまにゃあ時間守るだねえ。」
「馬鹿にしてんの?」
「事実をゆってるじゃん。」
例文音声はこちら
「師走だに なんでいるよを 嗚呼五月蠅っ ぷーんとがんこに 蚊あ飛びくさる」
訳
十二月というのにどうして居るのだああうるさい。嫌な音出して沢山蚊が飛び周る
今年はいつにも増して異常気象だな。12月にもなって蚊がブンブンというのは記憶がないぞ。
店屋に行っても今更蚊取り線香が店頭に並んでいる筈もなく、なんとかこの夏の残り物で蚊を除けている今日この頃。