遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
共通語に訳すと、「ああ納得納得了解しました」という意味になる。決して茶化した言い方ではなく真面目に納得した場合とかで使われることが多い。
そう言った後で同じようなボケかましたりなんかすると、嘘つき(理解してねえじゃねえか)とけちょんけちょんに言われる事になる。
というか聞いてる方は「分かったふりしてて途中で(今頃になって)気づきやがったなこいつ」という印象を与える。
例文
「そこんさあはやあ。右から順にじゃなくてみぎひだり交互にやるだあ。」
(そこのところはだねえ、右から順番にじゃなくて左右交互にやっていくの。)
「ああはいはいそうゆうこんね。どうりでやりづらいたあ思ってただよ。」
(ああ、うんうんそういうことかあ。どうりでやりにくいとは思ってたよ。)
「ってやあ馬鹿っつら。ゆってるそばからやっちゃいんじゃねえかあ。人のゆうこん聞いてるだかおんしゃ。」
(っておい!言ってるそばから言われたことやってないじゃないか。人の言う事聞いてないのか。)
「次のからせすと思っただよお。これはとりあえずやっちゃってえ。」
(これはとりあえずやりきって次からしようと思ってたの。)
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「誰もいないよ・誰もいないや」と言う意味。御免下さいと呼ばって沈黙の後「だんれもおりゃせん」と独り呟く使い方もあるが
子供だけがいてとかで用をなさん場合とかの人はいるけど用のある人はいないという場合でも使われる。
例文1
「御免下さい。・・・・あ、ボク家の人おる?」
「だんれもおりゃせんよぉ。」
「そお。じゃ出直いてくるで家の人来たらゆっといて。」
「うん忘れんかったらゆうとく。」
「頼むにい忘れんでよぉ。」
例文2
「毎度!荷物持って来ましたあ。」
「悪いやあ。今だんれもおりゃせんだよ。」
「貴方で結構ですんでハンコ戴けますか?」
「わしバイトだにい。数量チェックとかでけんでさあ。又後に来てくれんかねえ。」
これを共通語に訳すとなると実はニュアンスを伝えるのにはたと困るのである。
直訳すれば「綺麗にしてるよね・してるじゃないか」であるが、それだけでは足りない。予想に反してとか意外にもといった味付けが加味されることが多い。
無理したなあとか頑張ったなあとかいうニュアンスである。多少の冷やかしが籠もっている場合もある。
ちなみに「けっこく」は綺麗にとか清潔にとか整理されてとかいう意味である。
例文
「車買っただって?みしょうやあ」
(車買ったんだって?見せてよ。)
「おう!みとくりょを。」
(おお見てくれや。)
「おお、おーおぉ随分とけっこくしてからに。中わあ。」
(ふーん。随分と綺麗にしてるねえ。中はどうなってるの。)
「土足厳禁だでねえ。」
(土足厳禁だからね。)
「おんめえなあそりゃ行き過ぎだっつうの。」
(お前なあそりゃ行き過ぎだろうに。)
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直訳すれば誰がそんなことを言ってるのか教えてくれ。意味的にはその発言には不同意であって納得いかないから根拠を示せというニュアンス。具体的な氏名を述べよと言う場合もあるが法律で決まってるとかといった明確なものを示せというニュアンスの方が強い場合が多い。
そう言われて明快な返答が出来ない場合、いい加減なこと言うなとなじられるケースが多い。
もちろん上記のような使い方ばかりではないが多いのは確かであろう。
また、言った相手が存在していた場合、そういわれて馬鹿正直に誰から言われたと答えたりすると、後で名前出された人とかから口が軽いと陰口叩かれる事も起こり得るので言われた方は対処が難しい場合が多い。
因みに単純に誰から聞いたの?と聞く時は「誰から聞いたよー」と言う使い方をする。この場合不同意も同意もなくただ知りたいだけというニュアンスとなり険悪な雰囲気にはならない。
例文
「そかあ入っちゃかんだにい。」
(そこは立ち入り禁止だよ。)
「しいらんやあ。だれんゆったよをそんなことお。どこにも書いちゃありもしんに。」
(聞いてないよ。誰がそんなこといってるの?どこにも書かれてないじゃないか。)
「誰だっていいじゃん。なんしょあんたのせるこんおかしいだで。」
(誰だっていいじゃないか。とにかくあんたがやってる事はおかしいって。)
「失礼こいちゃうやあ。あんたなんかにちゃちゃ入れられる筋合いないだでねえ。」
(失礼しちゃうわあ。あんたなんかに邪魔される理由なんかないわ。)
「さっきいからそをゆってるじゃんかあ。なにいってるよお。」
(さっきからそう言ってるじゃないの。なに聞いてるんだ。)
「じゃん」は神奈川発祥の言葉として定着しつつあり、特に説明は要らないのだろうが、「じゃんかあ」・「じゃんねえ」・「じゃあん」・「じゃんらあ」とかは三河・遠州近辺でしか使わないらしい。
脱線するが、上記の文章を別の言い方にすると
「さっきいからゆってるらあ?なにょこいとるだあ。」
いちゃもんをつけるなと言っている。共通語だと聞いてとんちんかんなこと言ってるということで聞き方を咎める表現のところを遠州では誤った解釈で言う内容を咎めるという違いがある。
これの語気を強める表現は「あんたなに聞いてたよお」となることが多く、ここでようやくなに聞いていたのかと問うことになる。
整理すると、第一段階は聞いたことは理解してるだろうけど表現としておかしかないか。第二段階で聞いたことすら理解してないんじゃないかと分かれているということ。
それと、「そおゆってるじゃん」だと語気が荒いと受け取られかねなく、「さっきいから」を付けることによって語気を和らげる効能があるように感じられる。
題では「そお」と表記したが「そを」・「そう」と発してるかもしれない。
例文
「えーと、そうするとさいにゃこの道まっつぐいきゃあええだね?」
(そうするとこの道を真っ直ぐ行けばいいんだね。)
「ずうっとさっきいからそをゆってるじゃんかあ。なに聞いてたでえホント呆けただか。」
(ずっとさっきからそう言ってるだろうに。なに聞いてたんだよ?物忘れがひどくなったのか?)
「ひどい物言いだやあ。違っちゃかんと思って確認しただけじゃん。」
(随分な言い様だなあ。間違えちゃいけないと思って確認しただけだろうに。)
「きんのうから何回聞きゃあ気い済むだ。」
(昨日から何回同じ事聞けば気が済むんだ?)
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