遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
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すっぱいという事。漢字にすると「酸い」。古い日本語という気がする。
古いとはいえ「酸いも甘いも噛み分ける」という表現が一般流通してるのだから当然方言ということではない。が、この古い表現を遠州ではまだ普通に使っているということであろう。
「どうだ、酸っぱいだろう」だと「どうよ、すいら」という風になる。
ちなみに味覚及び料理の表現で言うと一例として「しょっぱい」は「しょんばい」・「からい」。「苦い」は「にんがい」・「にがあ」。「辛い」は「ピリピリする」・「かんらい」・「かれえ」。甘いは「あんまい」・「どあま」・「あめえ」・「あまったりい」。味が薄い場合は「なんも味せん」・「うっすい」。水っぽい場合は「しゃびしゃび」。硬い場合は「こわい」。柔らかい場合は「やわい」。熱い場合は「ちんちん」。冷たい場合は「ひゃっこい」・「ちべた」・「つんめた」。とかがある。繰り返すがあくまで一例であり個人差がある。
語呂で遊ぶなら「すいすいもの」(酸い吸い物)とかで遊べる。
「かんしんしんけどついついすいすいものついかしてやいやいならん?」
(感心しんけどついつい酸い吸い物追加してやいやいならん?)
(感心しないけどつい酸っぱい吸い物追加してしまったってことにならない?)
例文
「やあ、馬鹿酸いやあ。堪らん。」
(うわあ物凄く酸っぱいよお。堪らない。)
「そんな酸いだか?顔ん くしゃになっとるにい。」
(そんなに酸っぱいの?顔がくしゃってなってるよ。)
「喰ってみい。こうなるで。はあ顔なんか かまっちゃおれんに。」
(食べてみなよこうなるから。もう表情なんか作ってられないって。)
「いやあわし、酸いの好きくないだで遠慮しとくわ。」
例文音声はこちら
「酷いじゃないか」・「なんでわしばっか」・「随分じゃないか」・「おいおい勘弁しろよ」とかいった意味で使われる。
「ずいぶんじゃん」でひとつの形となっており「ずいぶん」・「ずいぶんだら」・「ずいぶんじゃんかあ」とかも使いはするが大抵は「ずいぶんじゃん」を使う場合が多い。その理由は「ずいぶんだら」などでは「まったくも~」とかいった「おいおい」感がなく単純に非難してるようなニュアンスが強くなるからであろう。
物の言い方にもよるが「ずいぶんじゃん」には和みを含んだニュアンスがこもることが多いので場の空気を壊すことが少ないためと想像される。少なくとも怒ってるイメージはない。
例文
「明日の会議での発表まかいたでねえ。」
「なによをずいぶんじゃん。自分わあ。」
「わしけえ?わし見てるだけ。なんか問題でも?」
「まあええよ別に。そんかわしあることないことぶちまけちゃるでえ。」
「屁とも思わんわあ。自分の首絞めるだけだにい。」
「むかつくう。どうすりゃあ参ったといわせれるだかいやあ。」
「あれえ簡単じゃん。伊勢神宮とかに連れてってくれりゃあ参ったっつうにい。」
「・・・・・」
「それか茂さぁんとこの息子今何年生って聞かれりゃ高3って言うに。」
「首絞めちゃろかあ。」
「そんときゃ降参なんて言わすかあ。ギブっつうわあ。」
「ギブはいいぃ。」
(ギブは言ってもいいのかあ。)
「うっ!墓穴掘ったかあ。詰めん甘かったなあやあ。」
例文音声はこちら
「スースーする」と言っている。ひんやりして気持ちいい感じの時に使われる。
「スースー」だと肌寒い印象を遠州では受ける。「すやすやする」の感覚は例えば湿布薬を貼って効いている感じであろうか。
つまり「スースー」は気になるというか心地よくない状態を指すもので「すやすやする」だと心地いいというものに対して使うものという使い分けを遠州弁ではしているということ。男女共用。
例文
「暑くて眠れんよを。いきれるしい。」
(暑くて眠れないよ。蒸した感じもするし。)
「ほいじゃ氷枕して寝ない。そうすりゃあ頭すやすやして眠れるでえ。」
暫くして
「なんかスースーして眠れんよを。」
「んじゃ枕にもう一枚タオル巻いてみい。」
例文音声はこちら
共通語だと「すやすや眠る」といった使い方が殆どであろうが、遠州弁ではひんやりして気持ちのいいものに対してなら大抵の事に使われるというところが共通語との違いであろうか。共通語だと「すやすやする」は幼児向け言葉で「安眠する」という意味になるらしいが。
ネットの辞書では、静かに快く眠っているさま・(風などが)静かで快いさま。とある。
湿布薬がひんやりして気持ちいいさまを「すやすや」というのは辞書の説明からしたらおかしい事になるのだが遠州ではそう使っているんだからこれは方言ということになるのであろう。
使い方は「すやすやする」であり「する」を省いて「すやすや」だけだと快眠といった意味使いでしか使わないことになる。
「湿布が効いてすやすや」だと「湿布が心地よくて眠入った」ということになる。
「湿布が効いてすやすやする」でないと「湿布がひんやりして気持ちいい」ということにならないのである。
「あんたにねえ、頭下げるよか ずっかマシ。」
(あなたに頭を上げるよりよっぽどマシ。)
「それよかこっちん方がずっとかいいって。だでこれにしない。」
(それよりもこっちの方がずっといいよ。だからこれにしたら?)
(余程・よっぽど・ずっと)といった意味。
「やっとかぶり」(ひさしぶり)というように「~か」がつくのが遠州弁の特徴なのだろうか。
方言というより俗語の範疇であろうかな。皆が皆こういうというものではない。
他の地方のはいざ知らず遠州だと「ずっか」はこういう使われ方をしてそうだというのを勘繰ってみる。
「ここに居るよりずっかまし。」訳さば「よっぽど」という事になろう。
元は「ずっとか」でそれの「と」抜きということになるんだろうか。「か」は関西的な「なんぼかまし」の「か」と同じ類いものであろうかな。
「この方がずっかいい。」
これだと「この方がもっと好い。」で
この場合の「ずっか」は「もっと」という意ということになろう。「よっぽど」にしてしまうとまだましといった勢いになってしまいこの場合には当てはまらない。
とにかく比較をした上で発せられるものであり、大まかに言えば「~よりもずっと」という意味合いの言葉である。ただし「ずっか悪い」・「ずっか変」とかいう悪い方に向く使い方はほとんど聞いた事がないので使いどころに制約はあろう。
使いどころとしては何かと比較した感想(意見)であって、かつ感覚的なもの(理屈道理によるものではないもの)で多少ではあるが好い方向に向かうであろう際に使われる傾向が強い。
ちなみに悪い方向に流れるような際には「よっぽど」を使うことが多い。
漢字にすれば「摺る」となるのであろうか
「引き摺る」(ひきずる)を略して言っていると思われる。
辞書を引くと「摺る」にはこういう意味は無いようなので方言もしくは俗語ということになるのであろうか。遠州独特かどうかは定かではない。
言い方は「ずり」・「ずる」・「ずれ」・「ずって」・「ずった」
「ずり」の使い方例は「その石左にずりない。」(その石を左にずらしなよ。)
「ずる」は「この石ずるでねえ。」(この石をずらすからね。)
「ずれ」は「その石ずれば済むこんじゃん。」(その石を引き摺って動かせば済む事だろうに。)「ずりゃあ」も同じ。
もうひとつは「やあそこんさあの石ずれやあ。」(なあ、そこの石を動かせよな。)
「ずった」は「誰んずったよを。」(誰が動かしたんだよ一体。)
「引き摺る」という行為そのものを指す以外にも引き摺って「移動させた」・「動かす」という意味で使われることも多々ある。「ずらす」とごちゃまぜになっているという考え方もできようか。
「引いて」摺るだけでなく「押して」摺る事も指す。
重い等で持ち上げられなくて引き摺るというだけでなく、面倒がって持ち上げずに引き摺って手元に寄せるズボラな行為にも使われる。逆に手元から遠ざける際に「ずる」を使うというのは聞かないので無いと思われる。
それ以外には、例えば車の腹が地面とかに擦った場合、軽度なものは「地面すった」で重度なものは「地面ずった」と言ったりすることもある。まあこれは「こする」の意の「擦る」という方であって「摺る」の「ずる」とは別物であろうが。
つまり遠州弁での「ずる」は
「ひきずる」・「ずらす」・「こする」が混在した言葉といったところであろうか。
例文
「おい、そこんさあの取って。」
(ねえ、そこにあるの取って。)
「めんどっちいなあやあ、自分でとりゃいいじゃん。」
(めんどくさいなあ。自分で取ればいいだろうが。)
「あんたんすぐそばにあるじゃん。」
(あんたのすぐそばにあるでしょうが。)
「しょんねえなあ。・・・・・ほれ。」
(めんどくさいなあ。・・・・。ほら。)
「横着してずっちゃかん。傷むじゃんかあ。」
(横着してずり寄せちゃダメ。傷むでしょうに。)
「とんじゃかねえら。文句ゆうなら自分でやれっつうの。」
(かまやしないわ。文句言うんなら自分でやれってえの。)
例文音声はこちら