遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
お先に失礼するねと言う意味。仕事終わって帰る時の挨拶とかである。雰囲気的に関西方面っぽい言葉である。なので「おさきい」だと遠州弁ということではないのだろうが「ね」とかがつくと遠州弁っぽくなるので記載。
パターンとしては
「おさきいね」
「はいね、お疲れねえ」
「ほいじゃねえ」
という流れがスムーズである。
例文
「ほいじゃ、おさきいね。」
(それじゃあお先に失礼するね。)
「なんでえはあ帰るだけ?」
(なんだいもう帰るのかい?)
「なによを帰っちゃかんだけ?」
(え~?帰っちゃダメなの?)
「かんこたあないけどまあちっといない。」
(ダメなことはないけどもう少しいなよ。)
「いやいやあ。用んないならちゃっと帰るでえ。」
(御免こうむる。用件がないのならとっとと帰るわ。)
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気の利かない人だことと言う意味。人を省略して「きいきかんやあ」という言い方も多い。「気の利かない」のと「気が利かない」のとではその意味するところは違うのであるが、遠州弁での「きいきかん」は「気づいてるけどしない」のか「気づかなくてしない」のどちらなのかというと無頓着で気づかないという方ではなかろうか。
しかしながら基本的には例文での訳のような咎める意味が目的で使われるのであまり深い意味を持たない表現の場合が多いのは確かである。つまり「きいきかん」は売り言葉であるのだがそのこと自体に目くじらを立てると余計話しがこじれるので事柄に対して反応することが重要であろうか。
例文
「ホントきいきかんやあアンタ。客ん来ただで茶あくらい出すら普通。」
(ちょっとあんた。お客さんが来たんだから普通お茶くらい出すでしょ。)
「なにゆってるよー。ちゃっと帰って欲しいもんで茶あ出さんじゃん。そんくらい気づきない。きいきかんひとだやあ。」
(なに言ってるのよ。直ぐ帰って貰いたいからお茶出さないの。それくらい気づきなさいよ。まったくもー。)
「どっちがよー。みこよくしとかんと後で困るのあんただにい。」
(こっちのセリフでしょう。覚えよくしておかないと後になって困るのはあなたでしょ。)
「やなもんはやなの。ほうきもたてときゃあ良かったやあ。」
(厭なものは厭なの。箒も立てておけば良かったかな。)
注、昔は歓迎せざるる来客があるとお内儀はほうきを立てて物言わぬブーイングの意を表わしたそうな。客に見えるようにあからさまにしたのか裏で黒魔術が如き念を込めたのかは定かではない。
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意味的には特に説明するところはないのだが、よく使われる表現なので記載。
訳すと「そんな細かい(どうでもいい)事なんか憶えてないよ」
より強めの表現だと
「そんだだもんいちいちおぼえてすかあ」・「んなもんいちいちおぼえてるかあ」
とかがある。「そんなもん」を「んなもん」と略す場合もあり、そういう場合イントネーションが変わるが意味は同じ。要は憶えてないなあというニュアンスである。
別な表現で「そんな細かい(どうでもいい)事憶えてないといけないの?」という場合は
「そんなもんわざわざおぼえてにゃかんだけえ?」
となる。この場合には「いちいち」でも「わざわざ」でも構わないのであるが、「そんなもんわざわざおぼえてちゃいんにい」という表現はあまり聞いたことがない。
「わざわざおぼえる馬鹿どこにいるよー」
も大体同じような意味で使われるが、これだと憶える必要がないだろうという開き直り的なニュアンスが強めになる。
例文
「きんのうの晩なに喰った?」
(昨晩は何食べた?)
「そんなもんいちいちおぼえちゃいんにい。なんでえ。」
(そんなのいちいち憶えてないよ。それがなにか?)
「いやね、ボケの始まりはこいうとこから分かるだってやっ。」
(いやね、ボケの始まりはこういう所から分かるんだってさ。)
「なに喰ったかなんてわざわざ憶える馬鹿どこにいるよー。昔っからおぼえちゃいんわ。」
(なに食べたかなんて憶えておこうなんて普通思わないだろう。若い時分から憶えてなんかいないよ。)
「つーこたあがんこ前からボケてたっつうこんだいね。」
(ということは随分と前からボケが始まってたってことだね。)
「いってくれるじゃんかあ。自分わあ?」
(言ってくれるじゃないか。そういう自分はどうなのよ。)
「心配すんな当然思いだせんのっ。だで仲間でえ。」
(心配しないで俺も当然思い出せないよ。だから同じだね。)
「なんかむかつくだけど。」
「気のせい気のせい。」
聞いてないの?と言う意味。?をとって語尾が上がらない「聞いちゃいんだ」だと「聞いてないんだ」という意味になる。
もちろん聞くに限らずやる・する等にも使われる言い回しである。
例文
「こないだのあれどうなっただって?」
(このあいだのあれどうなったんだって?)
「あれってなによー。」
(あれって何?)
「聞いちゃいんだ?」
(聞いてないの?)
「聞いちゃいんだ。」
(聞いてないよ。)
「あっそう聞いちゃいんだ。」
(あっそう聞いてないんだ。)
「なに?なに?きんなるやあ、おせえて。」
(なんだよ気になるなあ教えてくれよ。)
「いや聞いちゃいんならいいわ。」
(いや聞いてないならいいや。)
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「聞いてないよ」と言っている。
「きいちゃいんだ」(聞いて無いんだ)・「きいちゃいんもん」(聞いてないもの)を強めにした表現で、「そんなの聞いていないよ」といった突っぱねるニュアンスが増す。
「きいちゃへんにい」と「いん」を「へん」に替えても意味は変わらない。蛇足だが「きいちゃへんだ」だと「(あなたは)聞いていないんだ」ということになる。
どちらかというと私は悪くない(無関係)というニュアンスを含む感じになることが多い。
「聞いてへんにい・聞いてんにい」もほぼ同じ意味。
例文
「だれんそんなこんせろっつったよー。」
(誰がそんなことやれって言ったの?)
「班長が言ったじゃん。」
(班長が言ったでしょ。)
「きいちゃいんにい。いつう。」
(聞いて無いよ。いつ言った?)
「きんのう。終わりのミーティングでえ。」
(昨日。終わりのミーティングで。)
「しいらんやあ。」
(覚えがない。)
「いたらあ。聞いてんほう悪いだで、なんしょやらんとかんだにい。」
(居たでしょ?聞いてない方が悪いんだから。とにかくやらないと駄目なんだからね。)