遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
漢字で書くと「終いには怒るにい」。まあ、いい加減にしないと怒るぞという最終通告宣言なのだが、実際はこういう発言してる時点でもう怒っている場合が多い。
この表現が遠州独特かというとそうでもなさそうであるが、日常的に仏の顔も三度までみたいな使い方としてよく使われるので記載。
例文はいつもは会話調にしているが、こういわれると二の句が告げないことが多いので。
例文
「あんたねえ。いつまでとろとろやってるよを。早くしんとしまいにゃおこるにい。」
(あなたねえ、いつまでとろとろやってるの。早く終わらせないといい加減怒るよ。)
食べては寝てまた食べては寝てばかりしてるから、つまり堕落してるぞと言う意味。
この表現が方言かどうかはとても怪しいのだがそれなりによく使う表現なので記載。「ばっか」(ばかり)はついてもついてなくても特に意味の変化はないので省略されるときもある。
ニュアンス的にはあえて説明の必要は無いだろうが自堕落な様を表現している。したがって言葉通りの寝食以外の場合でも使われることがある。
決して褒め言葉ではなく批判的な言い回しだが角が立ちにくい言い回しとして重宝されるところである。
例文1
「なんか腹の周りがやばいよ。」
「くっちゃねくっちゃねえばっかしてるもんでえ。」
「くっちゃねくっちゃねえばっかなんかしちゃいんわ。そんな昼寝とかなんかしちゃいんでねえ。食うだけでえ。両方なんかやっちゃいんにい。」
「食いながしだったら余計悪いわ。」
例文2
「なんかヤル気ぃでんだわ。なんでかねえ。」
(どうもヤル気がでないんだよね。どうしてだろう。)
「くっちゃねくっちゃねえしてるもんでだら。」
(のんべんだらりんとしてるからじゃないの?)
誰もいないと言う意味。
「おらん」を「いんにい」(いないよ)にした場合「だんれも」という表現よりかは「だあれも」となるのが普通。「だあれもいんにい。」。
この表現の味噌は「誰」を「だんれ」・「だあれ」と撥音便化?・長音化?することにあるのだが、この使い分けについてはほぼ同じだが微妙にことなることもある。
「だんれも」となると言い切り的な印象を受け誇張して訳すと「人っ子一人」。
「だあれも」となると感傷的な印象を受け誇張して訳すと「誰一人」。
例文
「おーい。いるう?」
返事が無い。
「あれ?だんれもおらんだかいやあ。いんだけえ?」
やはり返事が無い。
「だあれもいんなら勝手に上がらしてもらうでねえ。」
誰に言ってるのか不思議。自戒の念によるものか。
部屋が暗いので灯かりを点ける。すると突如
「やあばかっつら。どまぶしいじゃねえかよ。」
真っ暗な部屋の中に人がいた。
「おわ!びっくらこいた。なんだあおめえいただか?いるならいるで返事くらいしろやあ。」
「風邪んひいてそれどころじゃねえわあ。ほんでなにせいきただあ。」
「あれ借りすかと思って。」
なにとんちんかんな事言ってるんだというニュアンスの言葉。
直訳すると「お前はなにを寝言言っているんだ」となる。まあ共通語で使われる意味と大差なく言い方が方言というだけであるが。
とんでもない的外れな事を言ったりした時のつっこみの言葉として使われることが多い。
「おんしゃ」の代わりに「おめえ」という言い方もよく使われる。(男子のみだが)
「お前正気か?本気か?」とかいった覚悟の程を確かめるような言葉ではない。ただ単に「ボケかましてんじゃねえよこのすっとこどっこい」と言っている。
喧嘩が始まる売り言葉になる場合もあるが、概して好戦的な表現ではない。好戦的に変化させたい場合は
「馬鹿かぁおんしゃあ。なに寝言こいてるだあ。ざけんじゃねえわ。」
とかを付加すれば売り言葉になる。「こいとる」が「こいてる」に変わっているがこの方がきつめな発言に感じる。何故なら「こいてる」は「こいてけつかる」の略っぽく聞こえるからである。と勝手に思ってる。
例文
「今日はええ天気だあなあやあ。」
(今日はいい天気だね。)
「おんしゃなにょ寝言こいとるだあ。午前中雨んだあだあだったにい。」
(何言ってるんだよ。午前中雨が凄かったぞ。)
「そうけえ。わし寝とったもんで知らんだわあ。」
(そうなの?午前中寝てたから知らないんだ。)
「寝とったって。知らなんだだ?雷とかも凄かっただにい。」
(寝てたって。気づかなかったのか?雷とかも凄かったのに。)
「おお。知らなんだ。」
(うん気づかなかった。)
例文音声はこちら
意味はまんまで「いい加減にしないと怒るよ」。
用途としては親がゆうこと聞かない子供に対して放つ「もうやめろ」の最後通告が最も多い。次には友人同士とか親密度の深いもの同士で成り立つ表現であろう。
だけどこれから怒るぞと言ってる割にはもうすでに怒っている場合の方が多く。
言ってることとやってることが違うじゃないかと子供心にそう思った記憶がある言葉。
ニュアンスは若干異なるが似たような言い回しとしては
「大概にしんと怒るにい」
というのがある。
例文
「あんた、いつまでやってるよを。早くかたしなさい。」
(も~。いつまでやってるの?早く片付けなさい。)
「もうちょっと・・・」
「も~いい加減にしんと怒るにい!はああんたなんか知らんで好きにしな。」
(もーいい加減にしなさい!もう知らないから勝手にしなさい。)
例文音声はこちら
以前同じような記事書いた記憶があるのだが、まあいいか重複しててもとんじゃかないかあ。