遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
直訳すれば「言わなくてもいいものを」。ニュアンスで訳せば「余計な事言いやがって」。
「言う」だけでなく「やる」・「する」などなど色々につく。
「にい」のアクセントは特別で普通の「そうだにい」とかのとは違う。
例文
「なんでAがここにいるよを。」
(どうしてAがここに来てるんだ?)
「○○が誘っとったみたいだにい。」
(○○の奴が誘ったみたいだよ。)
「あんにゃろを。ゆわんでもいいだにい。ホントしょんねえなあやあ。」
(あいつぅ。余計な事言いやがって。ホントにもう。)
「なんでえなんか都合悪いだけえ。」
(どうして?なんか都合悪いの?)
「どうもこうもあらすかあ。Aのおっかさに今日がきんちょの誕生日祝うだで、ちゃっとかやいてよって念押されてただよを。おっかさ自分がゆっても聞きゃへんで頼むって。」
(どうもこうもないよ。Aの女房に今日は子供の誕生日でお祝いするんだから旦那早めに帰宅させてよって頼まれてたんだ。奥さん自分が頼んでも聞いてくれないからって。)
「○○それ知らんかっただらあ。」
(あいつはそのこと知らなかったんだろうなあ。)
「んなわきゃあらすかあ。一緒に居た時頼まれただで。知らん訳ないじゃん。」
(そんなことないよ。頼まれた時一緒に居て聞いてたんだから知らない訳ないだろ。)
「忘れただらあなあ。」
(忘れたんだろうなあ。)
「それか聞いちゃいんかっただか。あんにゃろ。意味も無く頷いてけつかりゃがったな。」
(もしくは聞いていなかったか。あの野郎意味も無く相槌打ってやがったな。)
「どっちゃみっちゃはあ酒入ったでAみたいな飲兵衛に今からゆっても止まらんな。」
(どっちみちもう酒が入ったからAのような飲兵衛に今言っても止まらないな。)
「余計なこんしくさってはあ知らんわ。」
(余計な事しやがって。もう俺は関与しない。)
「そうは言うけれどあなたねえ」という意味。基本女性言葉。
軽くたしなめる程度の反論の場合に使われる。
「あなたはそういうけれど」とかいう風なモロ反論口調の場合には
「あんたあなにゆってるよを」
とかいった言い方になる。
男言葉で「そんだけどあんた」と同じニュアンスの表現は
「いやあ」・「つうてもなあ」・「ほんでもやあ」とかであろうか。
例文
「どうでえ。今だったら買やあ減税だもんで安いにい。それに付属品もつけるでねえ。」
(どうですか今お買い求めになると減税ですのでお安いですし付属品もサービスで付けますから。)
「そんだけどあんた。わし車の免許もっちゃいんもん。」
(そう言われても私車の免許持ってないから。)
「ご亭主は乗らんだ?」
(ご主人はお乗りになられるでしょう?)
「免許停止とかではあ懲りたっっつってたで。」
(免停とかでもう懲り懲りだって言ってた。)
「ほんじゃああんたなにせいここ来たよを。」
(それじゃあなにしにお越しになられたんですか?)
「涼みい。」
(涼みに。)
「内緒にしてよ」・「誰にも言わないでよ」・「言いふらさないでよ」とかいう意味。言うなと言ってるが内心こいつ言うだろうなという気持ちでいることが多い。絶対言うなというのであれば「ゆっちゃかんでねえ」辺りになるであろうか。
基本男女兼用の表現。
「にい」を抜くと命令口調になる。
「にい」を「て」に替えて「ゆっちゃかんて」となると「言わないものだって」とかいう諭すニュアンスになる。
「にい」を「ら」に替えて「ゆっちゃかんら」となると「言っては駄目だろう」とかいう憶測ニュアンスになる。
同じ口止めの際に使われる「ゆわんでよ」との違いは、時と場合にも依るが「ゆっちゃかんにい」の方が言うなという意識が強めになることが多い。ただし懇願といった要素も増えるので「頼むから」みたいな意味合いが増す。
「ゆわんでよ」と言ったのに喋られたら「ゆっただにい」(言ったのにい)と返すことが多く。
「ゆっちゃかんにい」と言ったのに喋られたら「あんだけゆっただにい」(あんなに頼んだのに)となることが多い。
つまり「あんだけ」というのは言うなと念を押した回数の問題ではなく意識を強く示したのにということを指す。
強めの命令口調であれば「ゆうなやあ」・「ゆったらただじゃおかんでねえ」とかになる。まあ命令というより威嚇に近いが。
例文
「やいやい失敗こいちゃってえ。」
(参ったなあ失敗しちゃったあ。)
「随分じゃん。まかしょっつうもんでやらいただにい。」
(なんだよもう。任せろって大口叩くもんで任せたのにい。)
「まあたまにゃああるでえ人間だもんで。」
(まあなんだ、人間なんだから間違えることもあるさ。)
「こんなこんならあいつに頼みゃよかったやあ。」
(こんなことならあいつに頼めばよかったなあ。)
「やあ。あいつにゃゆっちゃかんにい。馬鹿にされるで。」
(おいおい。馬鹿にされちゃうからあいつには言わないでくれよ。)
「どうせすかなあ。」
(どうしようかなぁ。)
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「捨ててしまえばいいじゃないの」と言っている。ただし「うっちゃる」には放棄と投棄と中断後回しとかいう使い方があるので必ずしも「捨てる」とは限らないが。
がんこ語呂が遠州弁的で気持ちいい言い回しである。
似たような表現で「ほかしなげる」・「ほかす」というのもあるがこちらは放すという行為のニュアンスが強く意思はあまり感じられない。「うっちゃる」には意思を強くイメージさせる。
つまり熱くて持ってられないような場合「ど熱いもんでつい鍋ほかしなげた」・「ど熱いもんでつい鍋ほかいた」とかいう言い方はするが「ど熱いもんでつい鍋うっちゃらかいた」という言い方はあまりしないということ。「つい」を外せば「うっちゃらかいた」を使っても違和感はないが。
例文
「なにこんなどぎたないの使ってるよを。はあ んなもん うっちゃっちゃやいいじゃん。」
(なんでこんな薄汚いのを使ってるの?もうそんなもの捨てちゃえばいいのに。)
「ほ~い、うっちゃっちゃっかんでねえ。」
(ちょっとを。捨てたら駄目だかねらね。)
「なんでよを。」
(どうして?)
「うっちゃらかいたら承知せんでねえ。がんこしただで。」
(捨てたりなんかしたら承知しないからね。高かったんだから。)
「いくらしたよを。」
(いくらしたの?)
「ゆったらあんたちんぷりかあるでゆやせんけど。なんしょがんこしただよ。代えんないだで。」
(言ったらあんたへそ曲げるから言わないけど。とにかく高かったの。代わりはないんだから。)
「ちゅうこたあなに?ひょんきんな話しなんかあったらわしよりこっち心配するだけ?」
(ということは何?もしもの話しとしてなんかあったら私よりこっちを心配するってこと?)
「まあそおゆうこんだいね。」
(まあそういうことだね。)
「やあ、ばかっつら。」
(ふざけんじゃないよ。)
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「あ~どうかなあ・どうだろう」と言っている。多分に気乗りしてないというか親身度に乏しい言い回しである。
「さ~どうだいやあ」となるともっと聞いてないというかどうでもいい感じになる。
これが「あ~どうだかいやあ」となると「あ~どういう具合なんだろ」と少しは気にしてくれてるというか考えてくれてる感じになる。
もっとも冷たい言い方は「さあなあ・さあねえ」・「知らんやあ・知らんよを」とかであろうか。
逆に親身な場合には「どうだったかやあ」・「どうだやあ」辺りか。
いづれも男女兼用の言葉である。
例文
「ここんさあにあった小物入れ知らん?」
(ここら辺に置いといた小物入れ見なかった?)
「あ~どうだいやあ。見た覚えないけど。」
(え~どうだろ。見た覚えないけど。)
「免許証入ってるもんで、あれんないと困るだよねえ。ホントに知らんだけえ。」
(免許証が入ってるんであれなくなると困るんだよね。本当に知らない?)
「さ~どうだいやあ。見ちゃいん筈だにい。」
(さあねえ。見てないよ多分。)
探したあげく
「あれえなによを。あんた尻ん敷いてるじゃん。随分じゃん。」
(うわ何よぉ。あんたの尻の下にあるじゃないの。ひどいなあ。)
「気づかんかったやあ。だでしょんないじゃん。でもやあ、見ちゃいんこたあ確かだにい?」
(気がつかなかったなあ。しょうがないでしょ。でもねえ見てなかった事は間違いないからね。)
「屁理屈ぁええでどけ!」
(いい訳はいいからどいて。)
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