遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
「いけしゃあしゃあと よくもまあ あんたそんなこと ゆえたもんだねえ 感心するわあ ほんと 呆れて ものもいえん。」
非常に長い言い回しだが多少のはしょりや言葉のの並び替えはあってもこれがひとつのパターンとして定着している。はしょりの一例としては「いけしゃあしゃあとよをゆうわあ」とかになる。「ゆえた」を「ゆえる」とする場合もある。他には「ゆえた義理じゃないらあ」とかがある。
長々と何を言ってるかといえば要は「あんたはなんて図々しいんだ」と言ってる。
もちろん非難してるよりも非常識にも程があるということに要旨がいっているのであるが、ほとほと呆れるといった表現をしているが実は内心必死で怒りを抑えてる状態もしくはすでに見放されていると思ったほうが無難である。ポイントとなるのは「いけしゃあしゃあ」。共通語なので説明は省くがこれで好意的ではないことを示している。
こう言われてもまだなんかぐずぐず言おうものなら見捨てられるか「勝手にしな」とか「ついてけんわあ」とか言われて去られることになる。つまり決裂するということである。まあこの発言が出たのではもう好感度信頼度ゼロになっていて手の施しようは誰かが間に入って「まあまあそをいわすとを・・」とかでないと治まりはつかないが。
例文
「わしこっちやるであんた あっちやって。」
「なにゆってるよを。きんのうもそうだったじゃん。なんで自分ばっか楽しようとするよを。」
「なにがあ。いいじゃん別にい あんたの方がいい給料貰ってるだで。」
「いけしゃあしゃあと よくもまあ あんたそんなこと ゆえるもんだねえ 感心するわあ ほんと 呆れて ものもいえんにい。あんたさあ わしん給料いいじゃなくてあんたがさぼってばっかいるもんで下げられたじゃんかあ。自分悪い癖になにゆってるよを。」
「だではあヤル気ないだで。あんたは給料分働きゃいいだけのこんじゃん。」
「そんな嫌なら辞めりゃいいじゃん。」
例文音声はこちら
「死なないから大丈夫だよ」と言ってる。決断・決行を促す際の後押し文句としてよく使われる表現。
意味合いとしては「失敗しても命取られるまでの深刻な話しとかじゃないだろう」・「人生が懸かる程の重要なことじゃないだろう」といった気を楽にしなよということであるが、すごくお気楽に物を言ってる印象を受ける。これによって緊張を和らげるという効能が見込まれる訳であるが。男女共用で使われる。
生死を懸けたみたいな危険と隣り合わせのような深刻な状況に使われるのではなく日常の何の気なしの躊躇とかに対して能天気に放たれる表現であろう。
こう言われて(後押しされて)その気なって実行したけど上手く行かなかったとしたら、言われた方は「なんだよ~」という気になったりするが、言った方は悪いこと言っちゃったとかいう罪の意識は殆どないし上手くいっても自分の手柄だとも思わない。そんな感じの親身ではない督促の表現であろうか。
あまり露骨に後が詰まってんだから早くしなみたいなことだと怒りを買うのでそういう状況で使うには言い回しに注意(配慮・工夫)が必要となる。
例文
「あんたなにしょろしょろしてるよを。どっちをやるだかちゃっちゃと決めてやりない。」
(なにトロトロやってるの。どっちをやるのかとっとと決めてやっちゃいなさいよ。)
「あれえ人がどうしっか真剣に悩んでるっつうだに 人のこんだと思ってどいい加減なことゆっちゃかん。」
(も~、人がどうしようか真剣に悩んでるっていうのに、他人事だと思ってどうでもいい事みたいに言わないでよ。)、
「大丈夫だってなんかあったって死にゃせんでいいに。それん なんかあったってわしちゃっちゃと逃げるで心配いらんよ。」
(大丈夫だって。命まで取られる訳じゃないんだから。それにもしなんかあっても私はとっとと逃げるから問題ないって。)
どうして行くんだと目的を問うているのではなく、どうやって行くのかと手段を問うている。
きちんと「なにで行くよお」という人もいるのだが、「なに」が訛って「なん」でになって「なんでいくよお」という人も結構いる訳で。自分もそういう一人。
唐突になにを言い出すんだ?と思わないように。まあ「なんで」のイントネーションが違うので間違えることはないとは思うが。イントネーションは平坦。男女共用の表現。
例文
「来週ちいとした休暇取ったじゃん。」
(来週にちょっとした休暇取ったんだねえ。)
「おお。北陸でも行かすかと思ってるだよ。」
(うん。北陸にでも行こうかなと思ってるんだ。)
「いいなあやあ。カニでも喰いいいくだあ。なんで行くよお。」
(羨ましいなあ。カニとか食べにいくのかあ。どうやって行くの?)
「いちおお汽車で行かすかなたあ思ってるだん。」
(一応電車で行こうかなとは思ってるんだけど。)
直訳すると「どうしてそんなことを言うの」となる。
意味合いとしては、期待を裏切られたとか思ってたことと違うとかのような意識してた事と異なる発言をされた時などに使う「意外」という表現である。
使いどころとしては、あなたはこういう人だと思ってたのに裏切られたみたいとか。恋人状態で相手にこう言われたら破局の訪れが近づいていくような気まずい勢いになることが多い。
もうひとつは発言した相手が意識と逆の心にも無い事などを言ったことに対する批判的な「嘘おっしゃい」という表現。
まあ共通語の「どうしてそんなことを言うの」と大した違いがある訳ではないのだが良く使う表現であるので一応記載。
基本女性よりの言葉なので野郎言葉の場合には
「なんでそんなことゆうだあ」・「そんなことゆうたあおもわんかった」とかが多く使われる。
返しとしては
「いらんこんじゃん」(余計なお世話)とか「そうゆうもんなの」・「知らすけえ」などが思い浮かぶ。
イタい表現というか非常にその場の空気が冷たくなる表現なので例文書くと陰鬱になるので無しにします。
「必要ないだろう」と言っている。
共通語では「ない」というところを遠州弁では「あり」と言うところが味噌であろうか。
「ひつようありもしんに」だと「必要ないじゃないか」という訳になろうか。
もちろん素直に「ひつようないらあ」とかいう言い方も存在する。全てがひねくれた言い方をする訳ではない。
ひねって考えれば「必要あるのか?ないだろう」という言い方が訛って省略して出来た表現が「ありもしん」ではなかろうかと推察する。ま、実際のところは「ありもしないだろう」の変形と考えるのが妥当だろうけど。
「必要ない」と言い切るような場合には共通語と同じ「ひつようない」と言う。特に遠州弁的言い回しは思いつかない。強いてあげるなら「いらんわ」くらいか。
例文
「あんたなにい。そのがんこな荷物わあ。」
(うわあ何?その大層な荷物は。)
「なにってもしもの時考えりゃこんくらい準備しといた方がいいじゃんかあ。」
(何ってもしもの時を考えればこれくらい準備した方がいいんじゃないのか。)
「必要ありもしん。山行くっつったって登山する訳じゃないだにい。在所の裏山で芋掘るだけだでねえ。」
(必要ないって。山に行くっていったって登山する訳じゃないんだよ。実家の裏山で芋掘りするだけのことだよ。)
「道ん迷ったとかしたらどうせるだあ。一晩越せる用意したって不思議じゃありもしん。」
(道に迷ったりとかしたどうするんだよ。一晩越せる準備をしたっておかしかないだろ。)
「大丈夫だよ雨振りゃちゃっと帰りゃいいだし。そもそも道なんかないだで道に迷うことなんかないで。」
(大丈夫だって。雨降ればすぐ戻ればいいんだし大体が道なんかないんだから道に迷う事自体ないんだから。)
「もっとやばいじゃんかあ。コンパスとかもいるかやあ。」
(もっとやばいじゃないか。そうなるとコンパスとかも必要かなあ。)
「行きゃ分かるけどほんの裏山だにい。そんな大層なもんじゃないだで。そんでももし分からんくなったらなんしょ下降りりゃどっかの民家に出るでそんなもんいらんて。」
(行けば分かるけどほんの裏山だよ。そんな大層なものじゃないんだから。それでももし分からなくなったらとにかく下に下りればどこかの民家に出るからいらないって。)