遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
以前「おんしゃ」(貴様・お前)これは浜北辺りの言葉か?と別記事に記したのだけれど。
その理由を就職してから浜北の人と接するようになってから覚えた言葉だからという実体験から導きだしたもの。あくまで個人的意見であるということを改めて述べときます。まあこれに限らず私の記事は全て個人的感覚で書かれてますが。
ところで、自分の集落辺りで「貴様」をなんと言っていたかというと「おんし」と言っていた気がする。ただし近隣の方は「おんしゃ」を使っていたというコメントを頂いたので私の周りだけかもしれない。
「おんしゃ」も「おんし」も男言葉で女性が使うことはまずない。女性は「あんた」・「あんたあ」をよく使うと思われる。
重箱の隅を突く様な細かい違いの話しであるかもしれないけれども言われ慣れてる違いからどうも「おんしゃ」といわれると違和感を感じるし自分からは使いづらい。
「ぼくんち・うちんち」みたいな「あんたんち」という場合は「おんしゃんち」ではなく「おんしんち」と言うみたいな。
どちらもおそらくは「お主」(おぬし)が変形して出来たであろうかと想像されるが、私には「おんしゃ」は「貴様は」と聞こえ「おんし」だと「貴様」と聞こえる。
例えば「おんしゃやあ」の場合「貴様はなあ」と聞こえ、「おんしやあ」だと「貴様さあ」という風に聞こえる。前者は説教されるっぽく後者は単に呼び止められてる風に聞こえるので「おんし」の方が言われて気が楽なのである。もちろん個人的印象であって、印象は人それぞれなので、異論が出るのは当然でしょうけど私にはそう受け取れるということ。
ところで「あんたあ」みたいな言い方である「おんしゃあ」に相当するのは「おんしい」であろうか。
尚、一般的に「おんしゃ」の方が遠州弁として広まっているので例文等では「おんしゃ」を使用。
余談だが子供の頃「恩賜の煙草」というものを「貴様の煙草」という風に誤解釈していた。皇居に清掃奉仕に行ってそれを戴いたという話しで、皇族の方も「おんし」っていうのかととんでもない勘違いをしてた時期があった。むろんガキの頃の話しである。
例文
「やあこのくそ忙しい時にどこ油売りいっとっただあ。」
(おいこの滅茶苦茶忙しい時にどこ油売りに行ってたんだ?)
「わりいわりい。便所でクソしてた。」
(御免御免。便所に行ってた。)
「年がら年中クソしちゃいんかおんし。」
(しょっちゅう便所行ってねえかお前。)
「普通みんなそうだらあ。」
(誰でも行くだろ。)
「そうゆうこんじゃなくて回数が洒落んならん気がするだけど。」
(そういう事じゃなくて回数が半端ない気がするんだけど。)
「気のせい気のせい。」
「仕事したかないせえじゃねえのか。」
(仕事したくないせいなんじゃないのか?)
「気のせい気のせい。」
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漢字で書けば「負えん」。別に「負えぬ」とすれば方言でもなんでもないし意味使いも方言的なものではないのだが。
共通語だと「手に負えん」・「始末に負えん」・「責任を負えん」とかで使われる。遠州弁ではもっと幅広く使うということで記載。
というか「~を負えぬ」というのをはしょって「おえん」だけで済ます傾向があるということ。
「やっちゃおえん」(やっちゃ駄目)
するなとストップをかけるのではなく、あなたじゃ無理・出来ない・資格がないとかの理由があるのだから手を出すんじゃないよと言っている省略形。はしょらず言うとなれば「あなたじゃやり負えないんだから手を出すんじゃないよ」と言う感じか。
「そりゃあおえんの」(それは手に余る話しだなあ)
自身が言えば「自分には無理だ」・「割に合わない」とか言う意味で、他人から言われたら「駄目だよ」・「損だよ」といったニュアンスになる。
実際生活していて紛らわしいのは「終えん」(終わらない)と混同しがちなこと。なまじっか意味が近いのでどっちを言いたいのか読み取れない場合がある。まあ大局で「やめたほうがいいよ」という捉え方でお茶を濁すことはできるが。
例文
「こんな勢いじゃああれだらあ。おえんにい。」
「なにがあ。わしじゃでけんっつうだか。」
「じゃなくてえ。やり方変えまいか。」
「なにがあ これじゃかんだけ。」
「行き当たりばったりじゃなくてさあ。ちゃんと図面引いてからにしまい。」
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「ああそうかい」と言っている。おおよそ二通りの使い方がある。
幾分冷たい反応と解釈される。興味ないとか心そこにあらずとか同意する気なしとか。聞き流す勢いになることが多い。
「おお そうけえ」だと「ああそうなのかい」と訳せばいいのだろうか。こちらは若干聞く耳がある風に感じられることもある。これより聞いてる風にするには「おおほうけ」(ああそうなんだ)という言い方があるがこれは男言葉である。女性だと「ああ ほう」とかであろうか、ちょっと不見識で自信がないけど。
もうひとつの使い方はムッとしてる状態だというのをアピールする時に使われる。一種のちんぷりかある一歩手前状態もしくははすとんがらす状態と言える。え~と共通語でいうと、すねる、か。
「ああそうかい それじゃ勝手にしな」という使い方。これを遠州弁だと
「おおそうけ ほんじゃ勝手にしろやあ」とかになる。
基本男言葉で女性の場合だと「ああ そう」・「ふ~ん」とほぼ共通語もどきを使う。共通語で一番近いニュアンスは「あっそう」であろうか。
共通語の気乗りしない表現である「ああ」が何故遠州弁だと「おお」になるのかは定かではないが、訳すにおいては「おお」ではなく「ああ」の方がしっくりくるのである。
これがパワーアップして「聞く耳もたない」ということになると
「ああ知らん知らん」
という言い方で「ああ」を使うのであるが。そう考えると遠州弁では「ああ」は突き放しで「おお」は「応」(おう)と一様受けているということになるのか。
そうなると「ああそうかい」と「おおそうけ」には温度差があるということで「おおそうけ」の方が多少温い(ぬくい)感があるという風に遠州人には聞こえるということか。
ちなみに「ああそうけ」だと完全にふてくされている事を隠していない勢いになり「なんだあその態度わあ。」と返されて戦闘態勢に突入することになり賢い表現ではない。
例文
「やいやい、予約してないで入れんて。」
(参ったなあ、予約してないから入れないって。)
「やあなんだや入れちゃくれんて?」
「みたいだの。」
「なんだよをシーズンじゃないだで予約なしでもいけるっつったじゃん。」
「しょんないじゃん。」
「しょんないって、予約しときゃ済んだ話しじゃん。大丈夫け?っつっただにい。」
「おおそうけみなきしわしん悪いだの。」
「いやそうゆうつもりじゃないだん。どうせるよを。」
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「おとっさ」と「おっとさ」。どちらも「オヤジ」と言っているのであるがこの違い(使い分け)は存在するのかというお話し。
そもそもこれが遠州弁かどうかは定かではないところであるが、それはまあ置いといて遠州での使われ方ということに限定して考えてみる。当然遠州と言っても個人差・地域差はあるのであくまで一個人の私案であることをお断りしておきます。
まあホントに重箱の隅をほじくるような些細な違いなんですけどなんとなくな印象としては、微妙な違いではあるが「おとっさ」という方が「オヤジ」ほどではないにせよ他人行儀な印象を持つ。
「やあおとっさ。いい加減にしろよなあ。」
訳としては「おいオヤジ」って勢いか。
「やあおっとさ。しょろしょろしてるじゃねえよ。」
「おとっさ」にしたら「はきはきやれよ」という意味合いになるが「おっとさ」だと「勘弁してくれよ」といったニュアンスが強くなるのは気のせいか。
「おっとさ」の方が親愛の情を感じるような気がする。「じじい」と「じいさ」との違いに近いか。
では身内が使う際はどうか。
子供が父親に言えばどちらも尊敬してる感は皆無である。他人に自分の父親の事を言うような場合に使うと上記と同じような感じになるかと。
連れ添いが言えば「おっとさ」は旦那を指すが「おとっさ」だと旦那の父親を指す場合がある。無論同居したりしてれば「おとうさん・おじいちゃん」であるが。
ということで大体な感覚としたら距離感・親近感が異なるということかもしれない。
なお、前にも書いたが「おっかさ」はあっても「おかっさ」という言い方は無い。母親は別格なのであろう。
私は使わないので細かいニュアンスはよく判らないのだがこう言う使い手は確かに存在する。ネットで調べたら結構広い地域で使われてるみたいなので遠州弁と言いきれるものではないが遠州でも使ってるということで一応記載。
かく言われた経験から推察すると「ぼろい」といった勢いの表現のようだ。使い古してくたくたとかぼろぼろになってるような状態を指すらしい。ただし「ぼっこい」と違ってけなす意味合いで使ってるつもりはないらしいので素直な感想の表現で悪意はないらしい。が、余計なお世話と思う時も多々あるのでもしかしたら「ぼっこい」とどっこいどっこいなものなのかもしれない。
これは自分の誤解だったが、「おぞましい」の略したものが「おぞい」と思ってた時期もあった。
「あの幽霊屋敷馬っ鹿肝くておぞくてホントいやったい」
みたいな。そんな勘違いでしたけど。でもこういう使い方もありそうな感じがしなくもないのは気のせいか。
例文は使わないだけにこういう使い方でいいのかちょっと自信なし。
例文
「やああれおめえの車けえ。がんこおぞいじゃん。いつから乗ってるよを。」
(なああれはお前の車かい。随分使い込んでるじゃないか。もう何年乗ってるんだ?)
「はあかれこれ十年近くはこれ乗ってるかいやあ。」
(大体十年近くはこれ乗ってるかなあ。)
「ここまできたら逆に値打ちでるかもしれんで頑張って乗るだね。」
「どっちみち金んないもんで買い替えれんもんで。いごかんくなるまで乗るだあれ。」
(どのみち買い換えるお金なんてないから動かなくなるまで乗り続けるしかないんだよ。)
「あれえ古いのだと逆に税金とかなんやらで維持費高くね?わしまた道楽で乗ってるだかと思ったわ。」
(なんだよ。古いとかえって税金やらなにやらで維持費高くならない?自分また道楽で乗っているのかと思ってたよ。)
「そうなんだよなあ。いっぺんに金使うかちょびちょびむしられてくか微妙っつやあ微妙だいね。」