遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
「なるようにしかならなんらあ。」
以前某有名人の方が好きな言葉として挙げておられましたがモロ遠州弁です。「やれるこたあ、きっちしやってるもんで、あたあもおなるようにしかならんらあ。」(自分が出来る事はちゃんとやってきているのだから、後は迷わず進むだけ。)要約すれば「人事を尽くして天命を待つ」と言う事になる訳で、非常に前向きな物言いになります。
逆に後ろ向きの場合だと、「やることやったって、全然駄目じゃん、だもんで、なるようにしかなりもしんに。」(努力しても報われないんだからなにやっても同じでしょ。」となる。要約だと「自暴自棄」でしょうか。
しかし、実のところ「なりもしんに」の代わりに「ならんらあ」を使っても(逆もあり)違和感はなく、他に「ならんにい」・「ならんやあ」・「ならんだで」など強弱を変える表現もあるので、文章全体の流れで読まないとプラス発言ともマイナス発言ともどちらともとれてしまう。
このように、「なるようにしかならん」という言葉が使い方ひとつで間逆に解釈できるのは遠州弁も同じで、明確に楽観的な時はこれ、悲観的な時はこれと言う風に分かれていないので、正直「なるようにしかならんらあ」だけでは発言者の真意は測りづらいところではある。
「ぎゃあつくほざくな、こうるさい。」
(ごちゃごちゃぬかすな、黙ってろ。)
「そんなひゃあひゃあいってもしんに。」
(そんな口うるさくいってないじゃないの。)
又は、「あ~悪かったねえ。」
(あ~そうですか。)
感情的には怒りの状態で発せられる言葉。なので命令口調となる。言われた方も売り言葉に買い言葉となるので、つっけんどんな口調になる。
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一般的にこの後は沈黙もしくはもう知らん状態となり、話題を代えるとかもっと深く追求するとかいうのには勇気がいる。
おっとさが帰ってきて、息子が見たこともないおもちゃで遊んでるのを見ての夫婦の会話。
「ただいまあ。」
「おかえりい。」
「あれえ、なんでえ。太郎見たこんないおもちゃで遊んでるじゃん。」
(あれ?どうして?太郎見たことないおもちゃで遊んでる。)
「そうなのよ。こないだのおもちゃ、はあ飽いたらしくてえ、別のおもちゃ買ってってどうるさくするもんで、しょおないもんで買ったただよう。」
(そうなのよ。この間買った奴、もう飽きちゃったらしくて他の買ってってせがむもんだから。しょうがなく新しいの買ったの。)
「なんでえはあ飽いただか?しょんねえの。誰に似ただか飽きっぽいやっちゃのう。」
(なんだよもう飽きちゃったのかよ。しょうがない奴だなあ。誰に似たのかしらないが飽きっぽい奴だ。)
「ほんと誰に似ただかねえ。」
「のう。」
「ねえ。」
「・・・・お前だっつうに。」
「いやいやいやあんただっつうに。」
「はあ飽いただか」には、あきれ返るという意味合いも含む。
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「うちんつれがさあ」(ウチの連れがさあ)
つまり、私の友達(知り合い)がねえ、と言う意味である。
例文
「前さあ、おめえ見たいっつってたマティスの絵。あれ先週から来週まで美術館で限定展示しとったじゃんかあ。はあ観いいっただか?」
(以前から観たいって言ってたマティスの絵が美術館で先週から来週までの限定展示されてるけど。もう観に行った?)
「それがさあ、まだ観ちゃあいんだよ。」
(それがまだ観れてないんだ。)
「あれえどおしてえ。お前のこんだでちゃっと観い行ったとばっか思ってたよを。」
(え?どうして?お前のことだからすぐ観に行ったとばかり思ってたよ。)
「いけそうな日ん いちんちだけあっただけどやあ。うちん連れがさあ、遊びいかまいっつって誘ってくれたはいいだけどさあ。そん日町内のどぶさらいの日でさあ。さぼる訳にもいかへんもんで結局行けんかっただよ。忙しくてそれっきりいくときんない。」
(行けそうな日が一日だけあったんだけどね。知り合いがね、一緒に行こうと誘ってくれたんだけど、その日が丁度町内のどぶ掃除の日と重なっちゃって、サボる訳にもいかず結局駄目で、それっきり忙しくて行ける日がない。)
「そんな仕事たてこんでるだか?休めれん。」
(そんなに仕事忙しいの?休みはとれないの?。)
「まあの。静岡までいかすとなると半日仕事だでなかなかしんどいだよ。」
(まあね。静岡まで行くとなると半日潰れるじゃん。結構大変なんだよ。)
「はよしんと終っちゃうにい。」
(急がないと終っちゃうよ。)
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美術館は浜松にもあるが静岡の県立美術館の方が、ロダンの常時展示されてる位、質が高い。映画館の数も含めて、浜松の文化水準は低い。政令指定都市になったからといって今後変わるようなことは期待が薄いような気がする。
例文
とある作業においての作業員二人の会話。
「そんなきぜわしないこんだれんやるよう。」
(そんな気忙しない事誰がやるって云うんだ?)
「おめえがやるだあれ。」
(当然お前がやるの。)
「やだよぉ。」
(やだよお。)
「やじゃあらすかぁ、やらんとかんだって。早くしんと時間なくなるにい。」
(厭じゃないの!やらなくちゃいけないの!急がないと時間がないよ。)
「Kちゃなにやるよぉ、わしがそっちやるでkちゃやってやあ。」
(kちゃんは何をやるの?俺がそれやるからこれKちゃんやってよう。)
「馬鹿こいちゃかんて、おめえこっちの仕事できもしんに。」
(冗談いうなよ。お前じゃこの仕事できないだろ?)
「~だあれ」には当然・当たり前という意味が含まれる。ある意味決定事項的な表現なので言われたことを履行しないと逃げたとみなされる。屁理屈で覆すには大変な労力がいる事が多い。