遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
見に行こうかと思ってと言う意味。
ここでも味噌は「いかすか」。
「せっかく鹿島の花火んやってるだでちゃっちゃと仕事かたいておっかさとガキん連れて見いいかすかと思ってるもんでえ、早よ終らまい。」
(せっかく鹿島の花火やっているんだから、テキパキ仕事片付けて、女房子供連れて見に行こうかと思ってるんだから、早く終ろうよ。)
「~しすかと思って」~しようかと思ってという使い方は遠州ではよく使う表現である。「し」を「せ」にする場合も多々ある。
「やりいかすかと」(やりにいこうかと)
「置きいかすかと」(置きにいこうかと)
「喰いいかすかと」(食べにいこうかと)
「寝えいかすかと」(寝に行こうかと)
「勝負せすかと」(勝負しようかと)
「明日にしすかと」(明日にしようかと)
「こっちにしすかと」(こっちにしようかと)
など挙げたらキリがない。大抵「思って」が次につく。集落によっては「見いいかすと」と「か」を省くところもある。
だまくら(騙して)かいちゃ(いるんじゃあ)いんらなあ(ないだろうな)と言う意味。
「だまくらかす」騙す・はぐらかすと言う意味合い。もっともこれが遠州弁ということではなくて「いんらなあ」が遠州弁の表現。多分「いんだらなあ」・「いんづらなあ」の「だ・づ」抜きに変化した省略形の言葉と想定される。
例文 突然とあるものをくれる人とあげると言われた人の会話
「やあなんか話しん上手過ぎやせんかあ?だまくらかいちゃいんらなあ。」
(ん~なんとなく話しが上手過ぎるような気が。なんか裏がありそう。)
「んなこんあらすけえ。いつも助けてもらってるだでこんくらいはしんとかんなと思ってさあ。」
(そんなことないって。いつもお世話になっているからそのお礼にと思ってさ。)
「なんかどがんこ嘘くっさ~く聞こえるだけど。目え泳いどるし。」
(なんか白々しいんだけど。目が泳いでるし。)
「まあまあそういわすとお、持ってってくんない。」
(そんなこといわないで、持ってってよ。)
「やっぱやめとくわ。ただより高いもんはないっつうでな。」
(やっぱりやめとくわ。ただより高いものは無いって言うからね。)
「わあったよ、しょんねえなあ、まじなこんゆうわ。きんのうおっかさ買ってきたの知らんくてやあ、わしも買っちまったもんで二つもいらんだよ。だでうっちゃる訳にもいきゃへんもんで貰ってくれりゃあゴミんならんで済むもんでさあ。」
(わかったよ、しょうがないなあ。ホントのこと言うよ。昨日女房も買ってきたの知らなくてね、自分も買っちゃったけど二つもいらなくてさあ。だからと言って捨ててゴミにする訳にもいかないから誰か貰ってくれないかなあと思って。)
「そんで恩もついでに売っとけってか?んな世の中都合よーまわらんて。じつぁの、おめえんとこのおっかさといっしょにうちんのも行ってただよ。ほんでうちもきんのうおんなしもん買ってきただよ。だでいらんだあ。」
(なるほどね、ついでに恩も売っとこうってことか。そんな都合よく世の中回らないって。実は、君の奥さんと一緒に家の女房も買い物行ってたんだ。それで家も昨日同じもの買ってきたからくれるといわれてもいらないんだ。)
「なんだよおそれえ。先い言えよぉふんだだこんわあ。知っててそういうこと言うう。」
(なんだよそれ。そういうことは先に言えよ。とぼけて聞いてやがって。)
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もうあきれ果ててなにもいうことないという訳になる。「開いた口がふさがらない」という使い方と同じである。
分解すると、「はあ」(もう)「もお」(本当に)「あきれかあって」(あきれかえって)「ものもいえん」(ものがいえない)ということになる。「はあ」と「もお」は似たり寄ったりなので、(もう本当に)でも(本当にもう)でもどっちでもいい。
訳なしでも意味が通じるが、結構良く使う言い回しなので要チェックの言葉である。
意味合いは、馬鹿にされてると思ったほうがいい。突き放した言い方ではないので、言われたらニヤっとエヘ笑いをしたほうが無難である。そうやって下手に出れば助け船を出してくれる可能性も出てくる。
突き放しだと「信じれん!」という表現が多く使われる。
例文
「あんた何パンなんかくっとるよう。もう昼食い終わってそれじゃ足らんもんで喰ってるだか?育つねえ。」
(なんでパンなんか食べてるの?昼ごはんじゃ足りないから食べてるの?育ち盛り?)
「それがちがうだあれ。きんのうパッチーでン万貯金してきたもんで金ん無くてさあ。だもんで昼はこんだけ。」
(いや違うんだ。昨日パチンコでン万円すってしまってお金がなくなっちゃってさ。だから昼はこれだけってこと。)
「あんたねえ。はあもおほんとにぃあきれかあってものいえんわ。給料日までまだだいぶあるじゃん。どうせるよう。」
(あんたあ、あきれて開いた口が塞がらんわ。給料日までまだ大分あるよどうすんの。)
「今週の休みで貯金した分取り戻すだあれ。」
「もお信じれん!」
かなりリアルなよくある話し。浜松にはお馬さんはいないがオートレースと競艇にパチンコといった利子もつかないし貯蓄しても還ってこない場合がある銀行がある。大抵の人は貯金のし過ぎで衣食住ともに質素に暮らしてる。
厭味みたいなことを言うという意味。何かある度にぐちぐち不平不満を言う奴に向かって放つ言葉。遠州弁かどうかは定かではない。
「いやみったらしいこんぬかすじゃないにっ。」
(厭味っぽく言うんじゃないの。)
他の言い回しでは「いやみったらしいこんぬかすなや。」というのがあるがこれは野郎言葉。
「いやみったらしいこんこきゃあがるとぶっさぐるぞ。ぶつくさこかんではよやれやー。」」
(厭味みたいなこと言ったらぶっ飛ばすぞ。ごちゃごちゃぬかさんと早くやれよ。)
女性言葉だと「いやみったらしいこんいわんのっ。ぐちぐちゆわんでちゃっとやって。」
近い言葉で「いやったらしい」と言うのがある。意味はいやらしいと言う意味である。いやったいと同じ(記事いやったいを参照)。
厭味を言う奴を「いやみったれ」と呼ぶ。別に遠州弁ではないが一応記載。
「いやったらしい」という「たらしい」の言い方は「人たらし」の「たらし」と勘違いされかねないが当然違う。
「いやみなこん」(嫌味な事)より和らげた言い方が「いやみったらしい」で「嫌味っぽい」と訳すことが無理がないところであるがニュアンスとしては粘着性が「たらしい」とすると増すところである。
私のあずかり知らない事だからねと言う意味。色々使い道があり、多少強引ではあるが三通りの使い方が一般的。
A.なにかとんでもない事をしでかした時の言い訳として(開き直り)。
B.もう知らん後は勝手にやんなとか私は関係ないからねという怒りの捨て台詞。
C.知ったこっちゃないという強引に何か事を起こす時の宣言的発言。
Aの例
「ちょっとお、あんたなにしてるよお!まだ出来ちゃいんだに蓋開けたら駄目じゃんか。」
(ちょっと待ちなさいよ!未だ出来てないのに蓋開けちゃだめでしょ。)
「そんなこんひと言も教えてもらっちゃいんもん。前もってゆわん方が悪いだで。駄目んなったってわしん知ったこんじゃないでねえ。」
(そんなことひと言も教わってないもの。事前に言わない方が悪いんだから、駄目になっても私のせいじゃないからね。)
Bの例
「ちょっとお、あんたなにしてるよお!まだ出来ちゃいんだに蓋開けたら駄目じゃんか。」
「はあええと思ったもんで開けただよ。わしん判断いかんっつうなら後あんたやんなよ。はあどうなろうとわしん知ったこんじゃないでねえ。」
(もういいと思ったから開けたんじゃないの。私の判断にケチつけるっていうのなら、後はあなたが勝手にやりなさいよ。私はもう手をださないからね。)
近い言葉で「わし知らんでねえ」と言う表現がある。ニュアンス的には「知らんこんじゃない」と言う方がより強く突き放した言い方に聞こえる。
Cの例
「ちょっとお、あんたなにしてるよお!まだ出来ちゃいんだに蓋開けたら駄目じゃんか。」
「時間ありもへんにぃ。自分喰うわけじゃないだで不味くたってわしん知ったこんじゃないでねえ。不味いだけで喰ったって死にゃせんらあ。」
(時間がないでしょ。私が食べるわけじゃないんだから不味くても知ったこっちゃない。不味いだけで食べても死ぬわけじゃないでしょう。)
他の言い回しでは「知らすかあ」と言うのがある。
例文音声はこちら