遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
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暴れるというニュアンス。荒れ狂うという意味か。
「どたけってやる」だと「暴れてやる」という意味になる。
要は場の空気を破壊してやるとかいう使い方で暴力を振るうと言うことではない。
なあなあの雰囲気に活を入れる一石を投じる発言や行動の場合とかで使われることもある。
何でこういう表現が生まれたかを考えると二通り想像できた。(両方とも私見であり根拠のある話しではないのでお間違いなきよう。)
*「ど」は「ど馬鹿」・「ど厭」とかいった強調する表現であるが、「どたける」もこの「ど」(弩・度)であるならば「弩+猛る」ということになる。
ちなみに「猛る」を辞書で引くと、荒々しく行動する・感情が昂ぶる興奮するとなっている。
遠州では普段使いで「猛る」・「猛ってやる」とかいう表現はせず、あくまで「どたける」・「どたけってやる」として使うので上記の理由は必ずしも正しいとはいえないのだがそれらしい講釈には聞こえるらあ。
そう考えると方言という訳ではなく古い日本語が残っているということになる。はたして真相や如何に。
*もうひとつの考え方は「あだける」に「ど」がついて「どあだける」が訛って「どたける」となったという考え方。
「あだける」は方言で暴れる騒ぐという意味では同一なのでこの変化によって生まれた言葉であるという理屈もおかしくはない。
ただし古語辞典では「あたける」(騒ぎ暴れる・あたりちらす)という言葉が記載されており「あたける」が「あだける」に訛っていったとも想像が可能である。そして「ど」が付く表現については「あたける」が生き残り「どあたける」→「どたける」と言いやすいよう短縮されたのでは。人によっては「だぁたける」(ど+あ=だぁ)と言う人も存在している。
こちらも根っこは古い日本語の名残りといえなくもなし。はたして真相は如何に。
例文
「あんの部長。今日中に要員配置するっていいくさった癖に入っちゃいんじゃんかあ。あったあきたで午後の会議でどたけってやる。」
(あの部長め。今日中に要員配置するって言ってた癖に配置されてないじゃないか。頭来たから午後の会議で思いっ切り文句言いまくってやる。)
「みこ悪くなるでやめときない。」
(印象悪くするからやめといた方がいいよ。)
「しらすけえ。とんじゃかねえわ。やっきりこいたでなんしょ言わんと気が済まん。」
(知ったことか。どうでもいいよ。ムカッときたからとにかく言わないと気がおさまらん。)
例文音声はこちら
「どうしようもない」と間違いやすいのだが、「ど+しょうもない」物凄くくだらんとかつまらないとか全く意味がないとかいう意味である。
「どしょんない」という言い方もあるがこちらはとてもどうしようもないと物凄くくだらないと両方の意味を持つ汎用タイプの表現である。
「どしょうもない」と同じような表現では「ど馬鹿」・「馬鹿やあ」などというものがある。馬鹿の表現だとつまらないというニュアンスはなくなり純粋にお間抜け的くだらん系ニュアンスになる。
「どうしようもない」と言いたい場合には「しょんない」(どは付かない)・「やりようない」・「せずようない」・「しようありもしん」とか色々ある。
例文
「今日はあいつぁこんだけえ。」
(今日はあいつは来ないの?)
「あいつぁ家でどしょうもないこんせるでこんてさ。」
(あいつは家で他愛の無い事するから来ないってさ。)
「なによをどしょうもないこんて。」
(なんだいその他愛の無い事って。)
「知らんだあ。なにやってるだか。なんしょ行かれんだって。」
(知らない。なにしてんだかねえ。とにかく行けないって。)
「まあ本人がそうゆうだで恥ずかしくてゆえんような相当どしょうもないこんだらなあ。」
(まあ本人がそう言うんだから恥ずかしくて人に言えないような相当くだらんことなんだろうな。)
「それか嫌々家のてんだいやらされてるかも。」
(それとも嫌々家の手伝いさせられてるのかもね。)
「それもは別ん意味でどしょうもないなあ確かに。」
(それは別の意味でつまんないよなあ確かに。)
例文音声はこちら
物凄く下手くそという意味。「どべたくそ」という言い方もある。
イントネーションは「どべた」と「どべた」(平坦)の二種類がある。ニュアンスの違いは「ど」を強調した方は本当の下手に聞こえ平坦の場合は要領が悪い程度に聞こえる。
「どべたくそ」という言い方の場合は平坦となる。
遠州弁では「ど」と「馬鹿」を同じように使うがこの場合「馬鹿べた」とは言わず「馬鹿へた」となる。
「どべ」だと最下位という意味になりそれと意味が掛かっているようにも感じられる。
これの上の表現は「どんべた」・「馬鹿がんこへた」とかになるのであろうか。「どべた」はまだ許される範囲内であるが「どんべた」だともう任せられない領域を表わすことが多い。個人的な感覚としては「どべた<どんべた<どべたくそ<みちゃおれん」というランクで表現してる。
例文
「これだれんやらすよを。」
(これは誰が担当するんですか?)
「○○にやらすと思ってるだけが。」
(○○君にやって貰おうと考えているんだけど何か問題でも?)
「あいつぁこうゆうのどべただにい。こないだもへぼこいてたもん。」
(彼はこういったのは不得意ですよ。この間もミスしてましたから。)
「ほんじゃおんしゃやるか?」
(それなら君がやるかい?)
「いんやあ・・・ほんだったらやっぱ○○でええわあ。」
(いやそれは・・・それならやはり彼でいいと思います。)
「現金だのえ。」
(現金だねえ。)
「ようゆわれるだいね。」
(よく言われます。)
例文音声はこちら
滅茶苦茶寒いと言っている。
「ど」ではなく「馬鹿」を使うと
「馬鹿さんぶい」・「馬鹿さっぶい」とかになる。
「寒い」と言う言い方は「さぶい・さっぶい」の他に「さんむい・さむ」というのもある。「ちゃぶい」・「ちゃっぷい」もあるが「ちゃむい」はあまり聞いた事がないし「ちゃっむい」あどは聞いた事がない。
「くっちゃぶい」という「くそさぶい」の変形バージョンもある。
体感の度合いを大雑把に表すと(遠州でも地域差はあろうが)
死ぬ<殺す気か<ちんちん<熱い<うだる<だりい<あったかい<ぬくい<ぬくとい<中略(普通)<ひんやりする<ちべた<寒い<さぶい<さんぶい<どさぶい=馬鹿さぶい<くっちゃぶい=くそさぶい<死にそう<死ぬ
例文
「やあどさぶいなあ。」
(今日は冷えるねえ。)
「きんのうぬくとかっただに今日がんこだらあ。」
(昨日は温かかったのに今日は冷えるねえ。)
「三寒四温たあゆうけどひょうんきんだの。」
(三寒四温とはいうけれど差が凄いね。)
「なにその山間紫苑って。そんなの植わってったっけか。」
「ゆうてる意味が分からんぞ。なんで植わるだあ。」
へた→へったあ→どへた→どべた→どんべた→どべたくそ
もちろん個人差はあるが遠州弁における下手くその最上位の表現か。
普通遠州弁で凄く・物凄くという場合「ど」・「ばか」・「がんこ」が使われ、大抵はどの表現でも均等に使うのだが「へたくそ」だけは「がんこ」・「ばか」の使用は少なく多くは「ど」が使われる。
そういう意味では珍しい固有の表現ともいえるのではないか。
感覚的には「どべ」(ビリっけつ)+「へたくそ」の合体系のように聞こえ、とにかくこれ以下は見た事もないようなへたくそという印象を受ける。
ただし必ずしも中傷を目的とする表現ではなく時と場合にもよるが、大方は「見てられない」というニュアンスではある。したがって言われた方は陰口であろうとそれほどトラウマになるほどショックということに陥らない場合が多い。
例文
「やあどべたくそ。かしてみい。」
(も~下手くそだなあ。俺と替われ。)
「いいよわしんやるでえ。」
(大丈夫だよ俺がやりきるから。)
「みちゃおれんもんでゆってるじゃん。」
(見てられないから言ってるんだよ。)
「じゃ、見にゃいいじゃん。もこう行って茶でも呑んでない。
(なら見なきゃいいだろ。あっち行ってお茶でも呑んでなよ。)
例文音声はこちら