遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
「ぼろっちい」と言っている。
似たような表現で「ぼっこい」というのがあるがそれとの違いは「ぼっこい」は作りが粗悪といった感じで物の古い新しいには拘らなしに使われる事があるのに対し「ぼっちい」は古いとか磨耗・消耗したような物を指すことが多いという違い。
厳密ではないが、性能がいまいちとかいう場合は「ぼっこい」、貧粗なとかいう場合には「ぼっちい」といった使い分けもあろうか。
辞書・ネットの辞書どちらにも載っていないので使われてる地域の範囲が狭い言葉であろうが方言(遠州弁)と呼べるのかどうかは微妙ではある。
これが「へぼっちい」・「しょぼっちい」・「びんぼうっちい」とかなら分かりがいいのだろうか。もちろん意味はそれぞれ異なるけれどこういう傾向の言葉だということではあろうと思われる。
例文
鹿さん「そろそろ買い替えまいや。」
熊さん「なんでえ、そりゃぼっちいかもしれんがまだ使えるじゃん。」
鹿さん「物持ちいいなあ解かるけど。ぼっちいとかゆう問題じゃなくてさあ。アナログ放送じきに無くなるだもんでえ。」
熊さん「直ぐにじゃありもしん。そんなもん直前でいいだあ勿体無い。」
鹿さん「知らんにい。あたふたしてもを。」
熊さん「なにんあたふたせるだあ。」
鹿さん「そりゃあよく知らんけど。直前だと足元見られて値段高くなるかもしれんじゃん。」
熊さん「今が安いって誰んゆえるだあ。ところでアナログっか映らんテレビしか持ってんでテレビ観れんくなっても受信料取られるだかいやあ。」
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「ほい」は基本女性言葉であるが「ほれ」は男女共用である。
「ほい」を共通語に置き換えると「ねえ」とか「ちょっと」・「おい」とかになろうか。
「ほれ」は「ほら」辺りとなろうか。「ほれえ」で「ほらあ」。
「ほれ」の使い方例で「そら・それ」という使い方においては
「ほれみい」・「ほれみっせえ」・「ほれみよやあ」
といった「見る」という言葉に掛かる事が多い。意味としては「そらみたことか」というニュアンスの強弱の違うパターン。
「ほれしろ」・「ほれやれ」・「ほれ言え」
とかはあまり使わない。ただし「ほれゆいい」(ほれ言いなさい)みたいな関西風な場合には使われることがある。
「ほれどうよ」(そらどうだ)については男の場合「ほれみよやあ」・「ほれみっせえ」などという言い回しを普通は使うので主には女性が使う表現であろうか。
「そら・それ」という使い方でなく「おい・ねえ」という場合には上記のような縛りはなくなんにでもくっついて使われたりする。ただし女性及びじいさまが使うものでじいさまの域に達していない男はあまり使うものではない。男は「やあ」・「やい」を主力として使う。
例文
「ほれ、早くしな。でんと置いてくにい。」
(ちょっとを、早くしなさい。でないと置いてくよ。)
「待ってやあ。別にそんな急がんでもいいじゃん。そんな焦らして忘れもんしたらどうするよを。」
(待ってよ。別にそんな急ぐ必要ないでしょう。そんなに焦らせて忘れ物とかしたらどうしてくれるの。)
「前もって準備しとかんもんでじゃん。はあ行くにい。」
(前もって準備しとかないから慌てるんでしょ?もう行くよ。)
で、散々ぐちぐちいわれながらも準備が整い出発してから暫くして
「あれ、やだやあ。忘れものしちゃってえ。戻るにい。」
(あ、やれやれ忘れ物しちゃったよ。一旦戻るよ。)
「なによをそれ。自分焦らしといてそれはないらあ。」
(何それ?人には急がせといてそれはないでしょう。)
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「そうなんだけど」・「それでも」・「そうはいっても」といった相手の発言に対しての軽い反論・不同意の際に使われることが多い。
「そんだん」という言い方も存在する。
「そうだけど」を「ほうだけど」という風に「ほ」にすると関西風味が増すところであり、「そ」と「ほ」の両方が混在する地域というのが特徴といえば特徴か。
一体何が撥音便化して「ほんだん」になったのか。想像するに「そうだが」・「ほうだが」辺りになるのかな。でも普段使いの意味からすると「そうなんだが」であるけれど。「だん」は「だけど」という意味合いで使うのと「そない・ほない」の「ない」が「ん」に変化したと考えるとで「そないだけど」が詰まった言い方という勘ぐりも成り立つな。でもつまるところよく分からん。
九州の方面では「それでも」という意味の「そんでん」という言い回しがあるようなのでそれと同系統なのかな。
例文
「これいいにい。一家に一台あると便利だにい。」
(これはいいですよ。一家に一台あると便利ですよ。)
「ほんだん、うちそれとおんなしようなの持ってるで別にいらんやあ。」
(でも、家にはそれと同じようなもの持ってるから別に必要じゃないんだけど。)
「そんなことゆわすとを。最新のもんの方が絶対便利だって。」
(そうおっしゃらずに。最新の物の方が絶対に便利ですって。)
「そりゃそうだろうけえがうちお金ないもんでねえ。」
(それはそうなんだろうけど家は貧乏でお金がないものでねえ。)
「ローンも組めるにい。」
(ローンも組めますよ。)
「遠慮しとくわあ。」
(いえ結構です。)
「そおゆわすとを。」
(そうおっしゃらずに。)
「そろそろお勝手やらにゃかんでごめんねえ。」
(そろそろ夕ご飯の支度しないといけないのでごめんなさい。)
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注視せよとかいう意味ではない。
「ほらね」と言っている。
「ほれみい ゆった通りじゃん」
(ほらね、言った通りでしょ)
「みい」を強く発すると「そらみたことか」というニュアンスになる。
追及してる勢いがある。これの強めの表現が
「ほれみっせえ」。
ここまでくると鬼の首取った勢いくらいになる。
逆に弱めた言い回しだと
「ほれえ」
辺りであろうか。訳すと「ほらあ」といったところか。
例文
「なによをびしょびしょじゃん。」
「いきなり降ってきた。」
「ほれみい。ゆったじゃん傘持ってった方がいいって。」
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