遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
意味に方言的な特殊性はないのだが、日常的に頻繁に使われる。
「ホント厭んなっちゃう。」・「いやだやあホントにい?」・「ホントそうだって。」・「ホントかええ。」・「いやマジな話ホントに。」「ホントよをゆうわ。」・「ホントだか嘘だか知らんが。」・「まあホントそうじゃないかたあ思ってただよ。」・「あそう、ホントにい。」
合いの手のような使い方で、頻繁に使われるので、本当の事だという信憑性が極めて薄い。ホント真に受けたら損だにい。
方言が重度の場合は、「ホントに」が「フントに」になる。
早退のこと。地域によっては「早引き」というらしいが遠州では「早引け」と言う。もちろん個人差があるので決めつけはできないが。全国的な表現であろうから遠州弁というほどのものではないが遠州はこれを使うエリアに属するのではと思って一応記載。
普通に生活してて「はやびき」と聞くとギターとかの「早弾き」をイメージしてしまうので早退と言いたい時はやはり「はやびけ」を使うほうがしっくりくる。
辞書で引く限り「早引き」で記載されているので「はやびき」が共通語なんだろなと思う。
例文
「悪いやあ。今日頭痛いもんで早引けさして貰いたいだよお。」
(申し訳ないけど今日頭痛がするので早退させて欲しいんですが。)
「おんめえおとつい腹ん痛いっつって帰ったじゃんかあ。きんのうは喉で。で今日は頭かや。病名なによー風邪け?で、いつんなったら治るでえ。」
(君、一昨日腹痛だと言って帰ったじゃないか。昨日は喉でそれで今日は頭かい。何の病気?風邪?いつになったら治るんだよ。)
「風邪だたあ思うだけど痛いの順に上がって来てるでやあ。頭ん上ははあないで明日はええと思うだけえが。」
(風邪だとは思うんですが痛いのが上に上がって来てまして、頭の上はもうないから明日は大丈夫だと思いますけど。)
「理屈んよお通らんけどしょんねえなあやあ養生してはよ治せやあ。頼むにい。」
(根拠が理解出来ないけどしょうがない。養生して早く治して。頼むよ。)
もちろんこんな呑気な職場なぞ現実に存在はしない。
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個人差は大きくあろうが、「馬鹿野郎」を遠州人が心を込めて発するとよくこうなるという情景に出会った事が何度かあるのである。おそらくは男女共用だろうな。まあここまでくると方言でもなんでもないところであるがまあご愛嬌ということで。
男言葉では「ばあろを」というのもある。
決して酒とかに酔ってろれつが回らなくなっての物言いではなく感情のほとばしりから急くことによるものからくるものである。
ちなみに急いで制止したいような場合には「やあばかっつら」を使うので「ばかあろお」には即時性はあまりない。したがってすぐ反応することよりもまず相手が何に対して「馬鹿野郎」と言っているのか理解することが重要となる。
「おいちょっと、危ないよ」というのを「ちょぉ、やばいにい」というのと同じ傾向だろうがとにかく早く言おうとする場合の言い回しであろう。しかしそれは先にも書いたが緊急性からではなく感情が先走りしていての早く言おうとするからである。普通こういう場合は怒りが先ということはないので手が出るとかいうことはない。筈。
例文
「ばかあろを。おんしゃあなにやってけつかるだあ。」
「そんな言い方しんだっていいじゃん。ひどいやあ。」
「なにょうこくだあ。だまってりゃまだやってたらあ。やたらくしゃぼっち押して爆ぜたりしたらどうしてくれるだあ。」
「いまどきそんな機械なんかないよ。」
「なんしょ知らん癖にいぜくりまわすじゃないだあ。」
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「なしにするかあ」だと「なかったことにしようよ」と言っている。
別に方言でもなんでもないところであろうが「なかったこと」・「止め」というよりも「なし」で済ます傾向が顕著なのに地域性があるかなと思って記載。男女共用。
「なし」という言い方には「ご破算」・「中止」・「うやむや」・「下りる」・「再検討」とかいう意味合いで使われる。よりきっぱり言いたい場合には「やんめ(やんぴ)にしまい」などがある。
「止め」というよりも弱い言い回しで相手にお伺いを立てている勢いになる。相手に反論されると参るなあといった弱気・下手(したて)なニュアンスを感じる。つまり頼み込むという勢いが強まる。「あれなしね」・「なしにするでねえ」とかいう言い方でもそういう勢いは少なからずある。つまり反論する余地を残しているという感じに聞こえる。
例文
「こないだゆった話しさあ。あれなしにするかあ。」
「なんでえ、どうかしただけえ。」
「それがさあ。幹事として言わしてもらうと目的地あそこにすると予算が足らんだよ計算するとを。」
「なによをそれ、こないだ積み立てたので十分だっつってたじゃん。なんでよを。」
「しょうがないだよを。先週余分な出費しちゃっただもんでえ。」
「なによを余分な出費って。」
「旅行用のカバンでかわいいのめっけたもんでつい買っちゃっただよ。」
「なによをそれって横領じゃん。」
「ふんなこたあないよを。自分の積み立てた分使っただもんでえ。横領じゃないでねえ。」
「なら、自分行けんだけだもんで他の衆行けるならあんたなしで話し進めてくれりゃいい話しじゃん。」
「だってえせっかく旅行カバン買っただもんで使いたいじゃん。わしも行けるとこにしてやあ。」
「知らんよをそんなの。知らん知らん。」
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「どうして」と言っている。
別にごくごく普通の共通語で地域性のある意味使いをしている訳ではないのだが。すかしながら一般的に「どうして」と使うところを遠州では大抵「なんで」と言う事が頻繁な傾向であることに地域性があるかなと思って記載。
ちなみに「え」を付した「なんでえ」という言い方。「なんでえ」と「な」を強調していえば「どうして?」という意味となり「「なんでえ」と平坦に言えば「どうした?」という意味になる。このようにアクセント位置を変えることによって意味に変化を与えている。
例文
「いごかんじゃん。なんでだいやあ。」
(動かないじゃないか。どうしてかなあ。)
「なんでだいねえ。」
(どうしてだろねえ。)
「なにすりゃこうなるだかいねえ。」
(どうすればこうなっちゃうんだろうねえ。)
「そりゃああれだらあ。なんもせんでほっぽらかいといたもんでだらあ。」
(そりゃあれでしょう。何もしないで放置しといたからだろう。)
「んな気いさらさらないだけどやあ。」
(そんなつもりはさらさらなかったけどなあ。)
「んでも結果としちゃあそうなるだらあ。」
(でも結果としてそうなるんじゃないの?)
「なんでもいいけど、なんしょこりゃはあ駄目だのっ。やっぱ やごいなあ かんな。」
(理屈はどうでもいいけどとにかくこれはもう使えないね。やはり作りが貧粗なのは駄目だね。)
「だからってうっちゃらかすっつうのもなんだかやあと思わん?」
(だからといって捨てちゃうというのもどうかと思うけどね。)
「なんで?直せってか。」
(どうして?直せって言うの?)
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もっと細かく言えば「どう」より「なに」と言いたい性質なのが遠州弁人ということ。イントネーションの変化で感情の表現が随分変わるものであるが
「どうしてそう言う事言うの」→「なんでそんな事ゆうよを」
「どうしたいの?」→「なにしたいよを」
「どうしてもやりたいんだ」→「なんしょやりたいだよ」 (厳密にいえば「なんしょ」は「とにかく」なのであるが)
「どうのこうの」→「なんのかんの」・「ああたらこうたら」 (どう→なにという図式ではないがどうを使わないということで)
「どうかしてるぞ」→「なんか変だでえ」
さすがに「どうよこれいいでしょう」を「なにこれえいいらあ」と言うことは流石にないが。でも「みてみいこれいいらあ」・「みてやあこれいいらあ」などとは言うかな。
もちろん「どう」を意識して使わないとか避けてるとかいう事ではないのだが、傾向としてはそういう気がしてる。
話しがずれるが、「なんで」を「なして」という言い方は遠州ではまず使わない。