遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
「凄く旨いでしょ」と言っている。「どうまいら?」と語尾が上がれば「「凄く旨いでしょ?」となる。「どうまいらあ」だとイントネーションの違いで「凄く旨いでしょうに」・「どうだ旨いだろ」という二通りの解釈ととれる。語尾が上がって「どうまいらあ?」となれば「そうだろ?凄くうまいでしょう?」とかになる。
「どうまいら」の使い場所としては例として
「ね、分かるらあ。どうまいら。」
訳すと「ねえ分かるでしょ凄く旨いでしょ。」といった感じで同意を強く求める勢いになる。
「どうまいだら」だと「凄く旨いんでしょ」つまりまだ食べてない状態での発言。
まだそれを食べていない人に自分が今食べていて旨い事を伝えたい場合で「これ食べてご覧よほんとこれは凄く美味しいよ」ということなら
「これ喰ってみいにホントこれどうまいにい」
同じように薦める状態で自分も今食べていない状態で「これ食べてご覧よほんとこれはすごく美味しいんだから。」ということなら
「これ喰ってみっせえホントこれどうまいでえ」。女性言葉なら「これ食べてみいにいほんとどうまいだにい」
食べる前から旨いだろうとは思っていたけれど「食べてみたら凄く旨かった」だと
「喰ったらばかうまかった」
食べる前は旨いとは思っていなかったけど食べたら「思ってた以上に旨かった」だと
「いやあがんこうまかった」
人に勧めたくて「本当に旨いよこれ」という場合には
「ホントうまいにいこれ」
人に理解して貰いたくて「本当に旨いんだよこれ」だと
「ホントうまいだにいこれえ」
人に納得して貰いたくて「本当に旨いんだから食べてごらんよ」だと
「ホントうまいだで食ってみいって」
とかになる。あくまで一例でありましてパターンはまだいくらでもありますが複雑にしても分かりにくいので。
ちなみに旨いの強調形のパターンを挙げると
「どうまい」・「ばかうまい」・「がんこうまい」・「うんまい」
とかがよく使われるのではないか。明快な使い分けは多分ないと思われる。
蛇足ではあるが女性の場合「にい」表現を多用すると可愛らしいと映ることがあるらしい。
蛇足の例文
「これあんたけえ。」
(これやったのあなたなの?)
「違うにい、にいにだにい。」
(違うよ兄ちゃんだよ。)
これが違いの全てではもちろんないのだけれど、こういう使い分けの違いというものもあるよということで。
「おっきいら」だと「「大きいでしょう」
「おっきいだら」だと「大きいんでしょ」
「ほれみいおっきいら」(どうだ見なよ大きいだろう?)
「あそこ有名じゃん名物おっきいだら?」(あそこは有名じゃないの名物が大きいんでしょ?)
「ら」は実物を前にして「だら」は実物がない状況で
と言った風に使い分けをしているのであるが、これが「づら」を使うとどちらでも使える。もちろんイントネーションの違いによって使い分けがなされてあるので混同することはないのだが。
ちなみに「おっきいだ」となると「大きいんだ」といった風になり語尾を上げれば「大きいのか?」となる。
「やっぱおおきいだ。」(やはり大きいんだ)
「やっぱおおきいだ?」(やはり大きいのか?)
例文
「大仏ってやっぱおっきいだ?」
(大仏ってやっぱり大きいのかなあ。)
「そりゃおっきいだら。」
(そりゃ大きいでしょ。)
「どんくらいおっきいだかいねえ。」
(どれくらい大きいのかなあ。)
「知らんよを。見たこんないもん。」
(知らないよ見た事ないから。)
「さびゆく浜松よりかはおっきいだら。」
(さびゆく浜松よりは大きいんでしょ。)
「そりゃおっきいら。っつうか較べるもんがおかしいに。」
(そりゃあ大きいでしょ。っていうか較べる対象が変だよ。)
例文音声はこちら
「来ない」と言っている。細かくいえば「来やしない」ということか。
この「来」を「き」というか「こ」というかでの違いはどう違うのか。
多少寄り道するが、古語辞典では「こ」(来)はこう説明されている。
「く」(来)の命令形。「く」の命令形は「こよ」であるが、中古までは「よ」をつけないで用いられた。
と、ある。
カ行変格なので「こ・き・く・くる・くれ・こよ」。つまり「き」は連用形で「こ」は未然形か命令形ということになる。
ちなみに遠州弁では「こっちこ」(こっちに来なさい)という言い方があり、そんなことはないとは思うが上記の論法で言ったら遠州弁は凄い古い日本語を使ってるということになる。まあ普通に考えれば未然形の「こ」だろうなここはやっぱし。それに「こっち来なさい」の他の言い方として「こっちこぉ」とか「こっちへおいで」というニュアンスだけど「こっちきい」ってのもあるし。
ま、そんな自分でも理解できていない辞書からの受け売りの小難しいことはともかくとして、そんな事とは関係なく個人的な感覚でいえば
「待ってるのにきやせん」だと「待ってるけど来ない」。遅れる理由がなんかあったのかなあという気になる。この後に続くとしたら「なにしてるだやあ」とか「なんかあっただかいねえ」とかが違和感がない。
「待ってるのにこやせん」だと「待ってるのに来ないじゃないか」と憤慨度が高くなる勢いを感じる。この後に続くとしたら「あいつなにやってけつかるだあ」ってな勢い。
「くるっつっただにきやせん」では「来るって言ったのに来ない」
「くるっつっただにこやせん」だと「来るって返答したのに来ようとしない」みたいな確信犯的にあいつ来ないんだという感じになる。
もちろん「き」と「こ」を入れ替えても意味は成すのであくまで個人的な感覚なのであろうが。まあ「き」よりも「こ」のほうがキツイ物言いには聞こえることはそう間違いではないのではなかろうか。
それと年長者など目上が下の人に言う言葉は「こ」が基本で「き」でも可という感じで同列とかだったら「き」が基本で「こ」を使うとえらそうな感じになるって考えもあるな。ちなみに目下が目上にという丁寧な感じだと「こられえせん」・「こられやせん」といった感じで「き」は使わない。
ところで「せん・しん」(せぬ・しない)を「へん」に代えるとその意味合いはどう変わるかというと
「きやへん」・「こやへん」
「へん」は「せん・しん」と較べて柔らかい感じになるので「おっかしいなあ」といったニュアンスが強まって憤慨度が隠れる感じになるので「き」と「こ」の違いはあまりない印象になるような気がする。
あくまでなんのまとまりもない私見である。
さむい さんむい さみい さあむい さぶい さんぶい 冷える う~冷える
ちべた つべた つんめた ちゃぶい ちゃっぷい どさぶい どっさぶい くそさぶい
くっちゃぶい ばかさむい がんこ冷える ど冷える さぶっ こおる しぬ
まあこれ以外にも「寒い」と伝える表現はあろうがきりがないのでこのへんで。この中でどれが共通語でどれが遠州独特なのかよく区別がつかないので思いついた限り列挙した。
「ひゃっこい」は寒いというより涼しいという夏場とかで使うニュアンスだと私は思っているので外しましたが、地域によっては「寒い」というニュアンスで使われるところもあるやもしれません。
「冬はぬくとい鍋で夏はひゃっこいそうめんがいいな」とかいった風に。
「ど」を使う場合は「さぶい」で「ばか」と「がんこ」を使う場合には「さむい」という言い方をする人が多勢という気がする。
浜松での寒さは風の寒さで、雪国のようなしんしんとした寒さはまず体感するようなことはない。なので厚着でというより風対策が防寒の基本であろう。
とにかく無音の静寂さの中でかじかみつつも背筋が伸びるような凛とした寒さではなく、やたらと屋根の軋みや窓打つ風の騒々しさの中での落ち着きの無い寒さなのである。そうそうはいないが寒さを「(風が)痛い」という表現をするポンポン乗りもいたりもする。
かじかむ、こごえる、いてつく とか言う表現は書き言葉で普段の会話ではあまり聞かない気がする。しばれる という他地方の方言もおちゃらけで使ったりするひともいるがまず使う地域ではない。
ただし、浜松といっても市町村合併でひたすら面積が広くなり山間部においてはこの限りではない。
暑いに関してはこれほどの言い表し方の量はない。
例文
「やあどっさぶいやあ。」
(うわ~凄く寒いなあ。)
「今年一番だって。」
(今年一番の冷え込みだってさ。)
「明日氷張ってたらわし来れんで休むでねえ。」
(明日の朝道路凍結してたら来れないんでよろしく。)
「ばかいっちゃかん。這ってでも来んとかんにい。」
(なに言ってるんだ。這ってでも来なきゃ駄目だよ。)
「冷たいじゃん。」
「だで一番の冷え込みだってゆってるじゃん。」
「いや、そおじゃなくて。」
以前にも書いたが浜松の平地近辺は朝氷が張ることはあるが雪が積もらない。もし雪が積もったら大抵のところは雪道の準備をしていないのでまあもろもろな事が停止して騒動になるだろうな。
「もういいでしょう」と言っている。
「いいら」で「いいだろ」、「いいらあ」で「いいだろう」と訳すのが自然な感じがする。
例文
「まだ3分たっちゃいんにい。」
(まだ3分経ってないよ。)
「湯ぅちんちんの入れただでちっとばか早くたってはあいいらあ。」
(沸騰気味の熱湯入れたんだから少し早めでももう食べれるだろう。)
多分に感覚的であり想像予想で物を言っている感じである。
これだけで記事が終わるのもなんか味気ないので、これを言い回しを代えて色んなバージョンを列挙してみる。するとこらしょとある。
「はあいいにい」(もういいよ)
「はあいいだあ」(もういいんだ)
「はあいいけえ」(もういいかい?)
「はあいいだけえ」(もういいのかい?)
「はあいいもん」(もういいよ)
「はあいいじゃん」(もういいじゃないか)
「はあいいの」(もういいの?)
「はあいいわ」(今更もういいよ)
「はあいいだか」(もういいのか?)
「はあいいだん」(もういいんだけど)
「はあいいだな」(もういいんだな?)
「はあいいだに」(もういいのに)
「はあいいたあ」(もういいとは)
「はあいいでえ」(もういいので)
「はあいいだら」(もういいんだろう)
「はあいいだもんで」(もういいんだから)
「はあいいだで」(もういいから)
「はあいいっけ」(もういいんだっけ)
「はあいいっけか」(もうよかったんだっけ)
きりがないのでこの辺で。
例文音声はこちら
もちろん全てが最初の例文での「はあいいらあ」に置き換えることは無理があり、それらに対して新たに例文と説明全部つけてたら今度は長大な記事になってしまうな。