遠州弁を集めています 主に昭和の遠州弁で今は死語となってるものもかなりあります
「灰」の事を指すらしいのであるが、聞いたことはあるが私は使わないので「だそうな」としか言えないところである。「灰」ならなんでもかんでも「はいぼ」と言ったのか、どうなんでしょうかねえ。
囲炉裏や火鉢・行火(あんか)・かまど・風呂焚き・蚊取り線香などなど生活していて出てくるものだけを指すのかな。それとも外で焚き火とかして出来る灰なんかでも「はいぼ」と言うのかな。いくらなんでも「石灰」を「いしはいぼ」なんて言い方はしてないんだろうな。
今は殆どの家は灰が出る生活をしていないので使い道がなくもう死語の部類に入るのだろうかな。
「ぼ」を付すところが味噌なんだろうけれど、「ぼ」とはなんなのだろう。「ぼ」で思いつくのは「きかんぼ」・「おこりんぼ」とかの「坊」からきたであろう「ぼ」くらいなもんだけど。「とうせんぼ」とかもそうなのかしらん。親しみを込めた「愛称」なんだろうかな。
ちなみにネットの辞書には「ぼ」・「坊」より子供及びそれに準じる物を指す。(つくしんぼ)。とある。
「灰」はそれ(準じる物)には該当しないような気がするから「坊」ではないような気がする。つまり「ぼ」の意味するのものは結局はよく分からん。
火鉢に使われる灰は上質?なものらしく、ガキの時分ばば様のところの火鉢の灰を弄くってったら簡単に補充がきくのもではないらしくえらく怒られた記憶がある。そういえば火鉢の灰が舞う様を灰神楽と言うけれど灰神楽という言葉は好きだな情緒があって。でも実際の光景は洒落にならないけど。遠州弁だと「はいぼかぐら」と言うのかしらん。まさかね。ついでのまさかね続きでいうと「猫灰だらけ」って「猫はいぼまるけ」って言うのかしらん。
かまどや風呂焚き釜から出るような灰は肥料として使われてたし、生活に密着してたからこその親しみを込めて「ぼ」を付す言い回しになるのかな。想像ですけど。
遠州独特という訳ではなく三河の方でも使うらしい。私は使わないので使いどころが不明なので例文はありません。
「~しっぱなし」という事であるが「~しっぱなしにする奴」という意味を持つ。共通語では「っぱ」であろうが遠州弁の特徴として語尾を伸ばすというのがあり「っぱあ」となる。
というか「っぱ」だと例えば
「だしっぱ」で「だしっぱなし」といったように状況を表わすことになり「っぱあ」で「~する奴」という意味になるものである。(混在はしてるので明確にではないが)
イントネーションによっても違いが出たりもする。
「だしっぱあ」(出しっぱなしにする奴)
「おきっぱあ」(置きっぱなしにする奴)
「ぬぎっぱあ」(脱ぎっぱなしな奴)
「やりっぱあ」(やりっぱなしな奴)
意図したことではなく副産物であろうが「ぱあ」とすると「パー」とも聞こえ決して褒めていないという事も伝わるところである。
「使い走り」を「つかいっぱ」というが「ぱなし」という意ではなく「ぱしり」の略なので「ぱあ」と言ったとしても上記の意味を表す訳ではない。
無いついでに言えば「ストリッパー」・「スナイパー」も当然上記の意味を表すものではない。
例文
「なんだよこの散らかりようは。」
「説明する?」
「してみい。」
「家帰ってまず靴脱ぎっぱあでしょ。ふんでくついたとか服とか脱ぎっぱあで置きっぱあの出しっぱあで。食べたもん片しなしでテレビ点けっぱあでゲームやりっぱあでマンガとかも読みっぱあでそのまま寝えってこうなっただよ。」
「誰があ。」
「きんのうべろんべろんで帰ってきたあんた。」
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例えば「一時間ばか歩いて」だとその訳は「一時間ほど歩いて」となる。
つまり「馬鹿」ではなく「ばかり」の略されたものであろうということ。
もっとも「ばかり」と「ほど」の共通語的違いが「ばか」にはないので「ばかり」の略形であると言い切れるものではない。「くらい」という訳でも可である事がある。例えば「少しくらい」を「ちっとばか」というように。
「ばかり」(計り){副助詞}数量・分量が大体その程度であることを表わす。
「ほど」(程)どれだけあるか(どちらかであるか)についての大体の見当。副助詞的に範囲・限度・基準についてのおよその見当を表わす。(抜粋)
「くらい」(位)副助詞的に数量を表わす語や基準を示す語に付いて大体の見当を表わす。(抜粋)
と辞書にはある。
これらの共通点を探すととにかく「大体」。
「ばか」=「大体」ということなんだろうかな。従ってくそまじめに訳すと
「一時間ばか歩いて」は「大体一時間歩いて」ということになろうか。
例文
「えらい眠かったもんで一時間ばか仮眠するつもりで横んなったら、気が付いたら外真っ暗んなってた。」
「それが来んかった理由か?」
「んん。」
(うん。)
「んじゃねえよ。ちっとばかねぶいくらいで寝るじゃねえよ。」
(うんじゃないよ。少しくらい眠いからって寝るんじゃないよ。)
「ちっとばかじゃなくてがんこだっただよ。」
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そもそもこれが遠州弁なのかどうか定かではない(というよりほぼ共通語だろう)と思われるのだが
「ばばっちい」
共通語だと「ばっちい」で「ばばっちい」は地方性のある言葉だしょうという意見が合っていそうな気もするところで。はてさてどうなんでしょ。
遠州弁は「みみっちい」・「ちゃっちい」・「ぼろっちい」等こういった言い回しがよく使われる傾向にある。
とりあえず意味としては「汚ならしい」。「ばば」で「糞」をイメージさせるところである。というか「ばば」は「うんこ」という意味そのものであろうな。ネットで検索すると関西方面の言葉ということらしいが遠州でも通用するものである。
したがって「部屋がばばっちい」だと部屋が雑然としていて掃除してないから汚れているとかいう事ではなくて(こういう場合はこきたないと言う)、食べ散らかしや食べかすなんかの放置により異臭を放っているというような汚れというのをイメージさせるものである。
「ちい」は「~っぽい」といった意味合いであるので「汚ない」と言い切るのであれば
「ばばい」くらいでないと屁理屈としては矛盾するところである。ただし「ばばい」なんて言い方聞いたことはないので所詮屁理屈の論理は空っぽにしか過ぎないが。
とにかく「ばばっちい」の訳は遠州弁的には「汚ならしい」が適当であろう。
「ばっちい」は共通語では幼児言葉という分類だそうな。遠州弁での「ばばっちい」も確かに幼児向け言葉だけど大人同士で使っても左程違和感はないよな。
例文
「あんたなにい。変なばばっちいもんさわってるじゃないにい。」
(なにしてるの。おかしな汚らしいもの触ってるんじゃないよ。)
「ばばっちくなんかあらすけえ。」
(汚らしくなんかないよ。)
「じゃなに指で汚らしそうに持ってるよを。」
(だったらどうして汚いもの触るみたいな持ち方してるのさ。)
「塗料塗ったばっかだもんで手に付いちゃかんもんでそっと持ってるだよ。」
(塗料を塗ったばかりで手に付かないようにそっと持ってるのっ。)
「ああそうけ。変なとこ置いちゃかんにい。」
(ああそうかい。だったらむやみに置かないでよ。)
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状況としてはムッとした時になる口の形状を表して言う言葉。
形状を説明することが難しく上手く説明できない。
言葉を分解してみると、「はす」は「斜」つまり「ななめ」。「斜に構える」という風に使われる「はす」であろうか。「蓮」では意味分かんないし。多分「斜」であろうかと自分としては想像するところであるが。
どこぞの説明で「はそ」(鳥ならくちばし人なら唇を指す)という言葉があるというのを拝見したことがあるが、国語辞典にも古語辞典にもネットでの辞書においてもそういう事が記載されていないのでその「はそ」が「はす」に変化したという解釈は十分考えられるが正直なところ同調するまでの説得力に欠ける気がする。
いまひとつは「はそ」=「くち」とされているのもあったが、こちらもどの辞書にも記載はないし遠州弁だとしても「はそ」単独で使われる事は無いので例えば「口をはさむ」とかを「はそんはさむ」とか言っているのならばなるほどと思えるがそうではないのでこれも「はそ」=「くちばし」と同様説得力に欠ける気がする。
「とんがらす」は「先が尖ってる」とかで使われる「尖がる」(とんがる)+「させる」であろうて。
したがって「口を斜めに尖らせる」状態ということになる。「への字に曲げて突き出す」みたいなものであろうか。?いやなんか違うような気がするけど。
つまり光景としては口が突き出ていないと尖がったとは言えないし、感情としては憮然としていなければならない。ふくれっつらで頬(ほお)がぷうっと膨らんでなおかつ口はキッと結んでいるのではなくすぼめて突き出てる様というべきであろうか。でも必ずしもぷーっと膨らんでなくとも「はすとんがらす」使うもんなあ。よくわからない。
ちなみに「はすとんがり」・「はすとんがれ」・「はすとんがらん」とかいった変化はなく「はすとんがらして」・「はすとんがらせす」・「はすとんがらさす」とかいった変化になるのが違和感のないところである。
例文
「なによーあいつえらいぶすくれとるけどなにしたよを。」
(なんだよあいつ、えらくご機嫌斜めみたいだけど何があった?)
「自分のゆうこときいてくれんもんで、ちんぷりかあって口んはすとんがらせてけつかる。」
(自分の希望通りにならないもんだから、ぶすっとしてふくれっつらしていやがる。)
「甘やかしてるもんでえ。ちったあきつくゆうときゃゆわんとかんらあ。」
(普段甘やかしてるからだよ。少しはきつく言うべき時にはきちんと言わないと駄目だよ。)
「きつくゆって泣きゃ泣いたでばあばんとこいってまた甘やかされるだで。塩梅が難しいやあ。」
(泣くまできつく言うとおばあちゃんのとこ行ってよしよしって甘やかされるから加減が難しいよお。)
「ええだよなんしょゆやあ。頭使わんでも。」
(とにかく言えばいいんだよ。考えこまなくても。)
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その2
以前「はすとんがらす」(すねる・ふくれっ面などの不快を表わす表情)の記事を書いた際、「はす」ってなんぞやのまま分からず仕舞いであった。
そういえばと思いだし「はす」を使った言葉って他にないのかなと巡らし(妄想し)たら
「はすっぱ」(蓮っ葉)という言葉が浮かんできた。
その意味は、言動が浮薄なこと。女性の態度や言動に品がない事。また、その様。そのような女性をも言う。とネットの辞書にはあった。
繋がりが何もないから「蓮とんがらす」という事ではなさそうだ。
話し変わって、鳥のくちばしを「はそ」と言い鳥のくちばしのようにとがらせる様「はそとがらす」から変化して「はすとんがらす」となったという説があるということだが、これについては「嘴」という漢字が「くちばし・はし」と読むというのを見つけたところで「はしとがらす」が変化して「はすとんがらす」となったという繋がりが浮かんできた。
合ってるのかどうかは知らないが話しの筋はこれで通った事になる。
まあくちばしは最初っから尖っているものであって状況によって尖らせたり変化するものじゃなかろうというつっこみはあり「はしみたくとがらす」ということであるなら分からなくもないところではあるがそうではないところに無理が出そう。それにくちばしのような口の表情からすねるとかいうイメージは湧かないのがネックでに思える。「はし」を「はそ」もしくは「はす」と言うというのも無理がなくもない。
突飛な考えではあるが「はしぼそがらす」・「はしぶとがらす」を漢字で書くと「嘴細鴉」・「嘴太鴉」と書くそうな。これのどっちかが変化して「はし」+「とん」+「がらす」=「はすとんがらす」となったという妄想も生まれなくもないな。「嘴太」だったら「はし」+「ぶとん」+「がらす」となってありえそう。もっともカラスがいつもすねて見えるとかいう事はないので説得力は皆無のただの語呂遊びの領域だけど。
他には「端」ではしをとがらせるということで、口先を尖らせるというのではなくて口の端を尖らせる事を「はしとんがらす」で「はすとんがらす」になったとも勘繰られる。表情的にはムッとした感じとなってすねるというイメージには近いところである。しかしながらこれについても「はし」が「はす」に変わったのかの説明が想像がつかないのでなんだかなあではあろう。
などと色々妄想しとりますがやはりなんと申しましょうか、「はすにかまえる」(斜に構える)という「斜」が不快を表わす際に口が斜めになってすぼめる様から「斜とんがらす」じゃないのかと以前の記事で述べたのだが、意味的な「すねる・ふくれっ面になる」という事を考えるとこちらの方がいまも合ってるような気がするところである。
ところで、似たような言い回しで「ちんぷりかある」というものがあり、これとはどう違うのかとかを考えると。
「ちんぷりかある」は態度として横を向く・視線を合わさない・口を利かないといったものが思い浮かぶ。表情としては怒ってるという大雑把な類いでありこういう表情をすれば「ちぷりかあってる」ことになるという特徴的なものは思い浮かんでこない。
「はすとんがらす」はどうなのかというと、はて?となる。どういう態度を指すのかどういう表情を指すのか曖昧模糊としていて具体的なものを説明できない。こりゃ言葉の元を探るよりまずこっちのほうを先に説明できるようにしないといけないな。
諸々結論が出ないがとりあえずその2。